つくり手インタビュー

『三陸さをりプロジェクト』には10を超えるチームがあり、毎週どこかで織りの会が開かれています。今回は大森さんの案内で、大槌町月曜日チームを訪問しました。場所は仮設住宅の集会所です。お昼休憩の時間、集会所に残った小國さん、古館さんにお話を伺いました。

左から小國さん、越田さん、古館さん、袴田さん、永井さん、運営側の西舘さんと大森さん

失敗ではなく、“世界にひとつしかない作品”と捉える

——みなさんはいつからさをり織りを始めたんですか?

小國さん:一年半前からです。越田さんに誘われて。

大森さん:別会場でさをり織りの会を開いていたところに越田さんが来て、「うちの仮設でも体験会を開いてほしい」と頼まれたんですよ。元々卓上の機織り機を持っていたけど、使い方がわからなかったんだって。「じゃあ5人位集めてよ」とお願いして、集まってきたのがみなさんです。

——元々お友達同士だったんですか?

小國さん:震災後に着物を解いてベストや洋服をつくるサークルを始めて、その仲間でした。

大森さん:仮設住宅の部屋に閉じこもっている人を外へ引っ張り出そうと、いろんな団体がいろんな企画をしていたんですよ。

古館さん:仮設の狭い部屋だと何もできないからねぇ、みんなで談話室に集まって。私はここからちょっと遠い仮設に住んでいるからお昼ごはん持ってきてね。この仮設に住んでいる人は家に戻ってごはんを食べているんですよ。

小國さん:私も別の仮設から来てるんだけど、こうして出てくるのがまた楽しみなの。

大森さん:仮設の部屋って入ったことある? ここは3人家族用だけど、二部屋しかないし高い家具を置くと圧迫感がすごいのよ。

古館さん:冬は衣類がかさばるから、ポールハンガーが壊れちゃってさ。着るものを最小限に絞ってナイロンの袋さ入れてるの。

小國さん:狭いからすれ違うこともできなくて、お父さんとしょっちゅうぶつかるの。「お前なんで俺が行くほうに行こうとするんだ」って喧嘩して(笑)

大森さん:だからここに来てストレス発散するんですよ。

——最初にさをり織りをしたときはどんな感想を抱きましたか?

小國さん:織目がきつかったりゆるかったりして綺麗には織れなくて、でも楽しくてね。織り上がっていくのが目に見えるから。だから続いてるのよね。

大森さん:さをり織りってリズムなんですよ。リズムを覚えちゃえば早い。最初はひたすら織ってもらって、14種類の技法を教えました。

小國さん:織目がひとつ飛んじゃったり、線を2本入れるつもりが途中から1本になっちゃったりすると「失敗した」って思うんだけどね、大森さんは「それ失敗じゃないよ、世界にひとつしかない作品だよ」って言ってくれるんです。

実際、いまいち自信がなかったところを周囲の人から「これいいね、どうやって織ったの?」と褒められたりするんですよ。失敗もほかの人には模様に見えるんですね。

大森さん:そう、さをり織りに失敗はないんです。繊細で大胆で荒々しくて上品で派手で地味。それがさをりの魅力です。

それとどの仮設でもそうなんだけど、最初はみんな暗い糸を使おうとするんだな。「明るい色使いな」って言っても「大森さん、明るい色ってなーに?」って聞き返される。だから「孫の持ち物に使われているパステルカラーだよ、あれを思い浮かべて」って言ってさ。そうしているうちに段々色が明るくなっていきました。

——自分で織ったものを身につけることもあるんですか?

小國さん:そうそう、最初はマフラーとして使っていて、今後はそれをバッグにアレンジしました。段々気持ちにゆとりが出てくるのね。

——印象に残っているエピソードはありますか?

小國さん:さをりのファッションショーですね。自分で織った服を着て、ランウェイを歩いたんですよ。あれはすごく楽しかったです。

大森さん:あれを見た人が「私もさをり織りをやりたい」となって、新しいグループができたんですよ。

——今後の展望を教えてください。

小國さん:自分たちがつくったものが売れて、新しい糸を買ってまたつくって、それがある程度の収入になること。いまはただ織るのが楽しくて自分たちで使ったりしているけど、みなさんに使ってもらえると嬉しいです。

2016.11.21