物語後編

東北のつくり手たちとの出会い

s_sdg045つのプロダクトを生み出したMONKEY MAJIK MARKETですが、コラボレーションする相手はどうやって見つけたのでしょうか。

高橋さん:MONKEY MAJIKのメンバーは仙台在住歴が長いので、よく知っていたんですよ。「坊ちゃん石鹸とコラボしたい」と言ったのはDICKですし。教えてもらったところ以外にも、東北各地を回って「この地域には何があるかな」「この工房とは何ができるかな」と探していきました。

出来合いのものにロゴマークを入れる、といった簡単なコラボレーションではなく、形や配合を変え新たにデザインし直すというやり方をしたため、苦労は絶えなかったそう。

また、生産個数や販売価格にも頭を悩ませました。在庫を抱えることは避けたいけれど、小ロットすぎると工房にとっては手間ばかり掛かって負担になってしまう。きちんと工房に利益を返したいけれど、価格が高すぎるとファンにとって負担になってしまう。工房とファンとMONKEY MAJIK、それぞれにとって良い形になるよう、調整を重ねたといいます。

高橋さん:開発にあたって、メンバーも各工房を訪れ、製作工程を見学してつくり手さんと話をしました。ときには体験させてもらったことも。ものづくりの現場を見ることができたのは、メンバーにとってもすごくいい経験になったと思います。じっくりと地道に取り組む姿に、みんな感銘を受けていました。大人の社会科見学ですね。

工房の方々も「MONKEY MAJIKが来た」って喜んでくれたんですよ。良い関係を築くことができました。

1製品ができる過程で印象的だったエピソードとして、高橋さんは『坊ちゃん石鹸』のパッケージの話を教えてくれました。

高橋さん:現在はビニールで包装していますが、昔の『坊ちゃん石鹸』は紙で包んでいたそうなんです。MMMオリジナルパッケージはその昔ながらの方法で包むことにしました。でも、それをやってくれる工場が見つからなくて。『AZOTH』の社長に相談したところ、外注先を紹介してくれました。PTSDや心の病を抱えてしまった人たちが、社会復帰を目指して訓練する作業所です。発注することで少しでも支援になれば、と思いそこにお願いすることにしました。

プロジェクトを始めると、見えないところで色々な仕事が生まれていくし、点と点がつながっていくんですね。MMMを通して新しいなにかが派生して始まっていくと面白いな、と思います。

「復興支援」の枠組を超え、全国の人に東北の魅力を届ける

s_01_azoth完成した製品は、2年間に渡り全国ツアーに合わせて各会場で販売したほか、ファンクラブを通して先行販売も行いました。メンバーの想いのこもった製品はファンに温かく迎えられたといいます。

高橋さん:毎回ライブの最後にMMMのプロジェクトを紹介して、抽選で当たった人にプレゼントするんです。そこでファンとも会話が生まれて。「おばあちゃんが坊ちゃん石鹸使ってました」とか、「日本一の会社が石巻にあるって初めて知りました」とか。売り場では、お母さんに「普通のTシャツのほうが安いじゃない」と言われて、「でもお母さん、こっちは東北の人たちがつくってるんだよ」と説得している中学生を見かけたこともありました。

MMMをきっかけに製品のリピーターになったり、お店を訪問したりと、その後に続く縁が生まれていったそう。また、東北楽天ゴールデンイーグルスに在籍していたプロ野球選手や仙台にゆかりのあるサッカー日本代表選手といった著名人がTシャツを着た写真をSNSにアップするなど、嬉しい展開もありました。

知名度と発信力を持ったアーティストが被災地の工房とコラボレーションすることで、「復興支援」という枠組では興味を持たない層にも製品を届けることができる。地道に誠実にものづくりに取り組んできたさまざまな工房の技術の高さを知ってもらえる。そうしたメリットがあるのですね。

今後またどこかで大規模な災害があったとき、アーティストが各地の工房とこうしたコラボレーションを行えば、復興の大きな追い風になるのではないでしょうか。「そのために大事なことは何だと思いますか?」という質問に、高橋さんはこう答えてくれました。

高橋さん:その地域との関わり方もあるのでどんなアーティストでもできるとは思いません。ただ、取り組みを始めることで地域とのつながりや、新しい出会いが生まれます。その地域のことが好きだったら、きっと行きつけのお店やお気に入りのお土産、親しい友人なんかが思い浮かぶと思うんですよね。それを足がかりにまずは何かひとつ事例をつくれば、自ずと次につながっていくはずです。

あと大きいのは、デザインの力。プロジェクトやその背景にある意志を汲み取って形にしてくれる協力者が必要ですね。そうやってものづくりに絡む糸を手繰り寄せて、少しずつ形にしていくのがいいんじゃないかと思います。s_img_9447

 

■MONKEY MAJIK MARKET
HP: http://www.monkeymajik.com/mmm/

2016.9.23