物語後編

注文してくれた人のことを思い、布から選ぶ

s_11752627_299775716812870_4276732166308839894_n活動を始めた当初、『布さんだるO.B.N』の製品はナチュラルな色合いのものが中心でした。いまはビビットカラーのものやシックなものなど、バリエーションに富んでいます。

斉藤さん:イベントに出店してお客様の話を聞くうちに、「普段はナチュラルな服が好きな人も、家の中では派手なものを身につけたがったりするんだな」「好みは人それぞれなんだな」と思うようになりました。

だから、「私たちの布さんだるはこういうもの」と決めつけず、さまざまな色・柄を用意しています。「たくさんの色・柄から好きなものを選べること」も私たちの布さんだるの特長です。

ひとつとして同じものがないので、イベントに出るとみなさん迷われるんです。そうして迷っている顔、お気に入りを見つけて喜ぶ顔を見たくてやっているのかもしれません。

また、オーダーメイドにも対応しています。好きな色やテイストを聞き、その
人にぴったりの製品をつくって送ります。最近では、「スイカ風がいい」というリクエストに応え、鼻緒がスイカ柄のユニークな布さんだるを考案しました。

s_CpJ4ebPVIAA4DME一人ひとりに合わせて布から選ぶとなると、時間もお金も掛かります。経済効率性だけを考えるなら、3〜4種類に留めておいたほうがいいはず。けれども、効率ばかり重視した結果、楽しかった製作がいつの間にか「作業」になってしまった、というのもまたよく聞く話。斉藤さんたちは、自分たちのやりがいや喜びを大事にしてきたから、長く続けることができたのかもしれません。

斉藤さん:注文してくれた方のことを思って合う布を探したり、配色を考えたりするのは楽しいし、そうして形になったものを気に入ってもらったときは「ああ、手間を惜しまなくてよかった」と嬉しくなります。

気持ちを込めて一所懸命つくったものって、ちゃんと伝わるんですよね。そうしてつくったものが評判になって、「こういうのもつくれるんだ」「私にもつくってほしい」と注文が来たりして、結果的にたくさんの人に伝わっていくんです。

活動を続ける中で印象的だった出来事を聞くと、斉藤さんは新聞に掲載されたエピソードを教えてくれました。

斉藤さん:河北新報のティータイムという、読者からの投稿欄です。友人から「出てるよ」と言われて見てみたら、「いままで自分でつくったり、道の駅で買ったりしてきたけど、この布ぞうりが一番自分に合う」と書かれていました。団体名は出ていなかったんですが、石巻の主婦3人がつくっている布ぞうりで、東北ろっけんパークで購入して……と書かれていたので、「これって私たちのことだよね」と。

つくる大変さをわかってくれる人から評価していただいたこと、製品を気に入ってくださって投稿してくださったこと、両方嬉しくて。紙面は大事に取っています。

ひとりでも「ほしい」と言ってくれる人がいるなら

¥IMG_8112「失った仕事の代わりに何かできることをしたい」と始めた『布さんだる O.B.N』の活動ですが、新しい場所で働きはじめたり、赤ちゃんが産まれたりと、メンバーの状況も変化していきました。

震災から時間が経ち活動を終える団体も増えている中で、続けるモチベーションはどこから湧いてくるのでしょうか。

斉藤さん:布さんだるをつくっている時間って、無になれるんです。大変なことがあっても忘れられるというか、助けられるというか。つくることだけに集中できる時間が、気持ちを満たしてくれるんです。

ただ、製品を置いてくれていた『東北ろっけんパーク』が閉鎖することになったときは、活動を続けるかどうか迷ったそう。けれども、お客様から言われた一言がきっかけで、「続けよう」と決意したといいます。

¥IMG_8071斉藤さん:「やめないでくださいね」って言われたんです。「私はここの布ぞうりじゃないとだめなんです」って。それを聞いて、「やっていてよかったな」「この人が履き続けてくれる限り、やめられないな」と思いました。

布さんだるは、「支援だから買うもの」ではなく、誰かにとって「なくてはならないもの」になったのですね。

斉藤さん:元々、団体を大きくしたいとかこれで食べていこうという気持ちはありませんでした。多くを求めず、常に謙虚にそのときそのときを受け入れていこうって。だから、1年に1足しか売れなくてもいいんです。ひとりでもほしいと言ってくださる方がいるなら、私たち、つくり続けますから。

 


■ 布さんだるO.B.N
ブログ:http://o-b-n.jugem.jp/
FBページ:https://www.facebook.com/布さんだる-267238680066574/
注文方法:o.b.n0923☆gmail.com(☆を@に変えてください)へ、好きな色・テイストやサイズ(大人用か子ども用か)等を書いてご連絡ください。

2016.8.11