物語後編
震災を経験した福島から発信する耐震型家具
白井さんは震災後、福島県の木造仮設住宅の建築に携わりました。プレハブにはない温もりがあると入居者から好評を得ています。
白井さん;仮設住宅は数年後には役割を終え解体されます。そのときに、どんなパーツも無駄にしたくない。そこで伊達クラフトデザインセンターでは、仮設住宅材のリユースを見据えたテーブル・ベンチの研究開発を行いました。活用方法のひとつとして提案したいと考えています。
また、自分たちが被災した経験を元に耐震型家具も製作しました。どんな揺れでも収納物が飛び出さない引戸に、枠が歪んでも閉じ込められない扉、耐震ラッチ付きの戸棚。「どうすれば安全か」とメンバー同士で話し合い、一つひとつ形にしていったといいます。
白井さん:震災のときの揺れは、「地球がおかしくなったんじゃないか」と思うほどのものでした。重いものが上から落ちてきてとても危なかったし、片付けても余震の度に散らかってしまって。
これからまたどこで地震が起こるかわかりません。だから、全国の人に家具の耐震性を見直していただきたいんです。
震度6弱を経験した自分たちだからこそ、発信できるものがある。そうした想いから、耐震型家具の普及啓発に努めているといいます。
木は未来につながる素材
日本は世界有数の森林国ですが、安価な外材の流入などさまざまな要因により、森に人の手が入らなくなり荒廃しています。しかし、白井さん曰く、いまが国産材、地域材の使い時なのだそうです。
白井さん:建築の現場で重宝されてきたスプルスという外材がここ数年で高騰していて、地元のヒノキを使うのとそう変わらなくなってきています。それなら地域材を活用したほうがいいですよね。
「曲がりやすい」「狂いが激しい」等の欠点のある木材も白井さんたちは諦めません。木の性質を調べ、新しい道具や加工方法を使って木を活かすことを試みます。
白井さん:木は、未来につながる素材だと思っているんです。いま流通している木材は、数十年前に植えられたものです。自分たちも、次の世代のために山を整備して、木を植えていかなければいけません。
そのために必要なのは、林業家、乾燥業者、加工業者、建築家と、木材に関わる事業者が協力しあうこと。広く連携して、地域材を活用する仕組みをつくっていけたらと考えています。
■伊達クラフトデザインセンター
WEB SITE:http://dc2.co.jp/
製品の購入は同社サイトよりメール又はFAXにて。
2016.6.15