物語後編

癒しの場はいまでも必要とされている

s_131120製作中『ふくぱーる』のつくり手のひとり、甲斐章子さんは、震災の被害が大きかった南相馬市に住んでいました。翌日には実家のある相馬市へ、その後ご主人が単身赴任していた福島市へと避難したといいます。

甲斐さん:福島市では、放射能から子どもを守るためのママサロンの運営を手伝っていました。青木さんとはこのサロンでアクセサリーづくりのワークショップを開いてもらったのを機に知り合ったんです。昨年秋に主人の仕事の都合で神奈川に引っ越すことになり、『ふくぱーる』を一緒につくりませんかと声をかけていただきました。

参加を決めたのは、売上がワークショップの資金になる点に共感したから。「震災時にたくさんの人に助けられたので、そのお返しがしたいと考えた」と甲斐さんは続けます。

甲斐さん:先日ワークショップを開いて、「震災から5年が経つけれど、福島のお母さんたちはまだ癒しの場を必要としているな」と感じました。みんな慣れない土地で子育てをする大変さを抱えているので、同じ境遇の人同士で話し合う場や機会を求めているんです。

地域や置かれている状況によって考え方はそれぞれ違うので、話しづらいこともあります。でも、手を動かしながらだと自然と話せるんですよね。だから、たくさんの人にワークショップの機会を提供できたらと思っています。

福島のお母さんたちの想いを伝えていけたら

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青木さんは2013年に初めての子どもを産みお母さんになりました。『Peace Pearl』の活動を通じて親しくなったお母さんたちから、出産・育児に関してたくさんのアドバイスをもらったそうです。

青木さん:よく「子どもを産むと社会との接点がなくなる」といいますが、『Peace Pearl』があったおかげで、社会と程よくつながりつづけることができました。振り返ると、私自身もこの活動に助けられていたなと思います。

『Peace Pearl』では福島のお母さん以外にもさまざまな立場の女性を応援するプロジェクトを行っていますが、コンセプトはいずれも女性を応援すること。そのため、利益を優先して工賃を下げたり、価格を高くしたり、ということはしたくないそう。

青木さん:私自身が『Peace Pearl』の活動一本で食べていくのは難しいけど、子育てしながら取り組むにはちょうどいい仕事量、ちょうどいいバランスなんです。活動を大きくして会社にしようとは考えていません。いまのつながりを大事にしながら細く長く続けていくのが理想です。

s_IMG_6481ワークショップに参加した方から、『ふくぱーる』のつくり手になりたいと言われることも増えてきたそう。また、ピアスなど新しい製品をつくろうという話も出ているとか。そうやって自然な形で広げていきたいと青木さんは話します。

青木さん:福島というと、どうしても原発関連で声を大きく張り上げる人が目立ってしまいがちですよね。それを否定するわけではありませんが、普通の人からすると少し近寄りがたく感じてしまうのでは、と思います。

福島で暮らすことを選んだ人、福島から出る選択をした人、いろんな人がいていろんな考えがあります。一見対立する考え方に見えても、話してみると同じ想いを持っていたりするんですね。普通のお母さんたちがそれぞれの想いを持ってがんばっている。『Peace Pearl』の活動を通じて、そういうメッセージも伝えていけたらいいなと思っています。

 


Peace Pearl
サイト:http://www.peacepearl.jp/
on line shop:https://peacepearl.stores.jp/

 

2016.5.16