物語前編

パールアクセサリーを通して女性を応援する『Peace Pearl』代表の青木梓さんは、震災後に福島のお母さんたちとパールを使ったバッグチャームを開発しました。製品には、「福島の女性と購入してくれた女性、両方を見守り幸せを応援したい」という想いが込められています。

女性を見守り幸せを応援するパール

s_s-イメージ①20120603「ただ給料がいいだけではなく、社会を良くする仕事がしたい」。青木さんがそんな風に考えるようになったのは大学生のとき。国際協力のスタディツアーでタイを訪れ、貧しくても逞しく生きる現地の人々や、彼らを支援する人々の存在を知り、感銘を受けたといいます。大学院に進学し、インドネシアやフィリピンの国際協力支援・女性支援を研究しました。

青木さん:一般企業に就職してそういった分野からは離れてしまいましたが、大学院時代の仲間とは時々集まって勉強会をしていたんです。そのうちのひとりが携わっていたフィリピンの女性支援活動を手伝うことになり、資金集めのために現地の市場で購入したパールをチャリティバザーで販売しました。これがとてもよく売れたんです。パールは若い方から年配の方まで幅広く好まれるんですね。

また、パールは貝の体内で育まれるので、古くから女性を象徴する宝石と言われてきました。出産時のお守りにも使われていたそうです。女性支援のツールとしてぴったりだと思い、『Peace Pearl(ピースパール)』という名称で活動することにしました。

活動を始めてから程なくして東日本大震災が起こると、青木さんたちは「国内の身近な女性を助けたい」という想いから、被災したお母さんが安心して出産できるよう支援する団体に売上を寄付することにしました。

青木さん:最初は寄付するだけでしたが、お母さんたち自身にアクセサリーを製作してもらうことで気持ちが明るくなるんじゃないかと考えたんです。連携できそうな団体を探して、『福島避難母子の会 in 関東』のみなさんにお声かけをしました。

『福島避難母子の会 in 関東』は、関東に避難しているお母さんたちが自主的に立ち上げたグループです。品川にスペースを持ち、月数回集まって情報交換をしていました。2012年5月にアクセサリーづくりのワークショップを行ったところたくさんのお母さんたちに喜ばれ、定期的に開催するようになったといいます。

福島の福に幸福の福をかけて

s_IMG_6483アクセサリーづくりのワークショップは好評でしたが、震災から時が経つにつれて、福島に戻ったり関西に移住したりと居場所が変わるお母さんが増えてきました。
離れてしまった人たちや福島にいる人たちとつながるきっかけがほしい。そうした声を受け、東京だけではなく福島、伊達、京都、横浜などさまざまな場所でワークショップを開催することに。延べ100人以上が参加し、ゆるやかなネットワークが生まれたといいます。

ただ、ワークショップを行うには交通費や材料費などのコストがかかります。最初は助成金を活用しましたが、安定して運営するために自分たちでつくったものを販売して資金を稼ごうと、ワークショップに参加した女性2人と一緒に商品開発を始めました。

話し合いを重ねて生まれたのは、コットンパールにスワロフスキーチャーム、タッセルを合わせた上品で華やかなバッグチャームです。

s_DSC05973_original
青木さん:福島の福と幸福の福をかけて、『ふくぱーるバッグチャーム』と名づけました。見ているだけで気持ちが上がるハッピーになるものにしたいと思い、ターコイズブルーやピンクなどカラフルなタッセルを選びました。

福島のお母さんたちと購入してくださった女性、両方を優しく見守り幸せを応援する製品でありたい。製品にはそんな想いが込められています。

2016.5.16