物語前編

「ほどーる」とは気仙沼弁で「あたたまる」という意味です。震災により家や仕事を失った清水由里子と木田裕子さんは、着物をリメイクして和小物をつくりはじめました。手仕事は、全国の人々との心あたたまる交流を生み出してくれたといいます。

お世話になった人への恩返しに

s_IMG_5756清水さんと木田さんは親戚同士です。震災前は徒歩15分ほどの距離に住んでいて、時折行き来していたといいます。しかし、津波によって家は両方とも全壊しました。

清水さん:うちは地理的に津波が来ないと言われていたんですよ。だから震災のときも大丈夫だと思い込んで避難せず家にいました。でも、職場から帰ってきた息子が「逃げろ」と言うので、しぶしぶ裏の山を登ったんです。それで助かりました。山から見下ろすとあちこちに土煙が立って家が流されていて、あんな黒い海を見たのは初めてでした。

木田さん:私は家にひとりでいるときに地震に遭ったんです。今まで落ちた
ことがない植木鉢が落ちたり重い扉が動いたりしているのを見て、「これは津波が来るかもしれない」と思い、高台にある学校まで逃げました。

その後はそれぞれ避難所や家族・親戚の家へと避難しましたが、親戚が持っていたアパートに入れることになりふたりとも引っ越しました。ただ、一通り家の片付けが終わると、何もやることがない虚無感に襲われたといいます。

清水さん:津波に負けず残った石蔵を片付けていたら、明治や大正の着物がたくさん出てきたんです。水に濡れてだめになってしまったものも多かったけど、無事だったものもありました。それで、その生地を使って小物をつくり、お世話になった方々にお礼の気持ちを込めて贈ることにしました。

s_IMG_5728製作したコースターや巾着は、贈った人からとても喜ばれたそう。「これを仕事にできないか」と考えたふたりは、秋口にミシンを購入し、本格的に製作を始めました。

日本の和小物、フランスへ

s_IMG_574411月になると、銀座にある気仙沼のアンテナショップで製品を販売してもらえることになりました。販売にあたってブランド名を『ほどーる』と命名、少しずつ製品ラインナップを増やしていきました。

たとえばそのひとつが、花の形をした針山をお猪口にいれた花針山。ころんとした可愛らしさがあり、飾っているだけでも絵になります。プレゼントにも喜ばれそうですね。

バッグの中身を整理する便利袋も人気製品のひとつ。中は3つに仕切られていて、ティッシュや薬など細々したものを入れておくのにぴったりです。ご祝儀袋を包むふくさ代わりにも使えるそう。

製品は年に数回イベントで出店販売をするほか、気仙沼市内の『もめん工房』『暮らし舎 麦』『すがとよ酒店』『かに物語 海の市店』といったお店にも卸しています。

s_IMG_57302013年にはロクシタンが主催する起業家コンテストで最優秀賞を受賞し、フランスのマルシェで出店販売する機会を得ました。そのときの縁が元で、フランスの雑貨店でも取り扱ってもらえるように。日本らしい和小物は、フランスでも好評を博しているといいます。

 

2016.4.8