物語後編

「あったらいいな」を形にしていく

s_IMG_56182015年11月、『aqua labo kesennuma』の工房兼店舗がオープンしました。それまではネットショップやイベント等で販売していましたが、知名度が上がるにつれて「店舗はないの?」と聞かれることが増え、菅原さん自身もいつしかお店を持つことが目標になっていたそう。震災が起こった頃に暮らしていたアパートの一室を借り、数ヶ月かけて改装しました。

壁に漆喰を塗り、床にフローリングを貼り、家具を什器へとリメイク。古い和室だったとは思えないお洒落なお店に仕上がりました。「製品と同じで、“こういうのがあったらいいのに”と思い浮かんだものはすぐにつくりたくなっちゃうんです」と屈託なく笑う菅原さん。ほぼひとりで仕上げたというから驚いてしまいます。

菅原さん:裏通りにある普通のアパートなのですが、予想よりもたくさんの人が来てくれました。ものを売りたいという気持ちより、喋ったり仲良くなったりしたいという気持ちのほうが強いので、立ち寄ってくれるだけで嬉しいんです。

s_IMG_5607落ち着いた空間なので、長居する人も多いそう。子連れでも気軽に来れるよう、店舗の奥のスペースには子ども用のおもちゃも置きました。ものづくりのワークショップも月2回ほど開催し、さまざまな人が出会い交流する場として機能しています。

定休日は毎週月火。観光客が来ることも考えて、土日は営業することにしました。家族の理解と応援があるから、お店を運営できているといいます。

菅原さん:学校が終わると子どもたちがここへ帰ってきます。家族サービスが充分にできていなくて申し訳ない気持ちもあるけど、私が働く姿を見て何か感じてくれたらいいな、とも思っています。好きなことを仕事にするって、大変だけど楽しいし頑張れるから。子どもにも何か好きなことを見つけてほしいですね。

気仙沼の魅力を伝えたい

s_IMG_5595気仙沼をイメージした製品をつくっている菅原さんですが、気仙沼の風景は震災後がらりと変わったといいます。防潮堤を建てる計画も進んでいて、昔ながらの風景は失われる一方。菅原さんはそのことに一抹の寂しさも感じているのだとか。

菅原さん:気仙沼では嵐が近づくと港に船がずらっと並ぶんです。小さい頃から見てきたので、その光景を見るとどこか安心します。でも、防潮堤ができると見られなくなるんだな、と想像すると、心にぽっかりと穴が空いたような気持ちになります。

安全性も大事だし、新しくできるものも大事だけど、古くから変わらない良さというのも気仙沼にはあると思うんです。だから、お店に立ち寄ってくださった方には、そういった気仙沼の魅力も一緒に紹介しています。「そのホテルに泊まるなら、近くにこういった場所がありますよ」って。私は一度も気仙沼から出ていないので、大抵の質問には答えられますから。

早くに子どもを持ち、ずっと主婦をしていた菅原さん。震災前は、こんな風に仕事をするなんて思っていなかったといいます。現在は、ママ友と一緒に新しいブランドをつくることにも挑戦しています。

菅原さん:ママ友から、「何か家でできる仕事ないかな」と相談されたんです。子どもが小さい時期は短いからできるだけそばにいたい、でも働かないとお金がない。そういう気持ちは私も味わったので、何かできないかな、と。

そこで、着なくなった子ども服をリメイクして、ポーチやエプロンに生まれ変わらせようと考えました。いま試作を繰り返しているところです。チームで物事を進めるのはひとりでやるのと違った難しさがありますが、お母さんたちにとって楽しい場所になればいいと思うので、なんとか形にしたいですね。

「あったらいいな」と思うものを自分で工夫してつくってみる。ここにも、菅原さんのポリシーが表れていますね。

s_IMG_5528菅原さん:震災で亡くなった義母が見たら何て言ってくれたかな、なんて想像することがあります。でも、こうして続けてこられたのは、どこかで見守ってくれているからなのかもしれません。

今後の目標を聞くと、菅原さんは「“気仙沼といえばこれだよね!”という感じで自然に根付いていったら嬉しい」と話してくれました。

菅原さん:気仙沼が好き、気仙沼の良さを伝えたい、という気持ちだけでここまでやってきました。だから、製品を見てくれた人が「気仙沼ってどんなところなんだろう」とか、「懐かしいな、久しぶりに行ってみようかな」と思ってくれたら、それでもう大満足です。

 


aqua labo kesennuma
サイト:http://www.aqua-labo-kesennuma.com/
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2016.4.7