つくり手インタビュー

s_IMG_3486『NPO輪プロダクツ』の福島メンバーは、工房の家主の佐藤さん(写真NG)、経理や営業、製作まで幅広く行う土田さん(写真右)、つくり手の佐野さん(写真中央)、販売やワークショップをサポートする圭子さん(写真左)の4人。お話を伺いに、福島市渡利地区にある工房を訪れました。

“つなげる”を合い言葉に

s_IMG_3471——佐藤さんと土田さんは、丹野さんの同級生なんですよね。活動に参加しようと思った理由を教えてください。

土田さん:同級会で富美ちゃん(※丹野さん)から活動の概要を聞いたんです。最初は「すごいなぁ、富美ちゃんは」と感心するばかりだったんですが、後から「手伝ってくれないか」と電話がかかってきて。私、家が近いんですよ。この工房から車で5分。そういうのもあって声をかけられたのかもしれません。ずっと主婦業をしていたんですけど、まさか同級生と一緒に働くことになるなんて思いませんでした。

佐藤さん:私も丹野にけしかけられたんですよ。「福島がこんな状態になってしまったのに、何もしなくていいのか」って。私は会社員として働いているものですから表立って手伝うことはできませんが、ちょうど実家が空き家になったところだったので、ここを活動の拠点として提供するという形で協力することにしました。

s_IMG_3499——佐野さんはどういった経緯で参加することになったんですか。

佐野さん:ベルトをつくる会(※ワークショップ)があって参加したんだな。そこで「(これを)仕事にしたい人はいないか」って呼びかけてたから、また行ってみたんだ。

−—なぜ仕事として続けようと思ったんですか?

佐野さん:いや暇だからよ。避難してきたから、俺は。飯館でべこ(牛)飼ってたんだ。だからこういう仕事はやったことないし、できねえって思ったんだけどな。

土田さん:でも、佐野さんは器用なんですよ。金具をトンカチでつける作業は力加減が難しくて、私がやると曲がっちゃうんですが、佐野さんがやるとぴたっと留まって動かないんです。

s_IMG_3464——活動は毎日されているんですか?

土田さん:毎週月・水・金が活動日です。そのほか、週1回は飯館のお母さんたちにサロンとして貸し出しています。イベントで『Rinn Products』の製品を販売したときに、たまたま声をかけた人が飯館の方だったんですよ。「地域のサロンにしたいので遊びに来てください」と言ったらすぐ遊びに来てくれて。場所を探していたみたいで、ちょうど良かったですね。

飯館のお母さんたちが製作している手芸野菜

飯館のお母さんたちが製作している手芸野菜

——土田さんはどんな作業を担当されているのですか。

土田さん:製作面では、ベルトのパーツをつなげて縫製したり、ストラップを編んだり。ものづくりを仕事にするのは初めてですが、趣味で何かをつくるのは好きだったから、楽しませてもらっています。

また、店舗への納品も担当しています。テーブルにただ並べるのではなくて、立体的に展示すると売上が伸びるんですね。すぐに結果が現れるから面白いです。アソートベルトは私が色の組み合わせを選んでいるので、売れていると「あれで良かったんだな」「気に入ってくれる人がいたんだな」と嬉しくなります。

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「解けないように先端を焼くんです」と土田さん。細部までこだわり、丁寧に製作しています

佐藤さん:イベント等で販売していると、通りがかりの方から「以前購入して、いまも身につけてますよ」とか、「これ知ってます」とか言われることがあるんですよ。数年続けてきて、「これをつくっているのは自分たちだ」「役に立っているんだ」という自負が芽生えてきました。試行錯誤で形を整える時期を終えて、ようやく安定してきた段階でしょうか。

花見山が見頃を迎える4〜6月は、桜のキーホルダーに花見山の栞をつけるそう。これも土田さんのアイデアです

春は桜のキーホルダーに花見山の栞をつけます。これも土田さんのアイデアです

——震災直後の福島市はどんな状況だったのでしょうか。

土田さん:このあたりもかなり揺れたんです。渡利地区はみんな瓦が落ちてしまって、業者さんへの依頼が殺到して修理に何ヶ月も待ちました。

佐藤さん:でも、それよりも大変だったのは原発事故です。確かに怪我をした人もいるし、家が壊れた人もいる。でも、その点はもう充分復興していると言っていいでしょう。ただ、福島はそこに原発が加わりましたから。いまだに人が入れない地域があって、避難したままの人がいる。今後何十年もかかる話です。

それこそ佐野さんなんて、自分の家に戻れないんですから。住むところが無くなって、家族がばらばらになって。本当に大変ですよね。隣の家まで車で行くような広い敷地に住んでいた人に、こんな狭い家でちまちま作業してもらうのは何だか申し訳なくて。でも、こうして積極的に来て、楽しんで活動してくださっている。私たちにはそれがとても嬉しいんです。

土田さん:前向きなので、佐野さんは。何でも楽しんでくれるんです。

s_IMG_3409——今後の展望を教えてください。

佐藤さん:まずは販売先を広げたいですね。現在はコラッセ、道の駅で販売していて、先日から飯坂温泉にも納めることになりました。また、丹野がINDEEDで宣伝してくれているので、時々大口の注文が入ります。この人数なので限界もありますが、たくさんの人に手に取っていただきたいので、できる範囲で販売先を広げていきたいです。

ーー最後に、何か伝えたいことがあればお願いします。

佐藤さん:何かをつくる、というのは楽しいことですよね。製作を続けてきて、
つくる楽しさをみなさんに味わってもらいたいなと思うようになりました。

私たちの活動の原点は、「つなげる」こと。革をつなげていくうちに人とつながり、そしていつの間にか明るい未来につながっていたらいいなと思っています。

2015.12.8