物語後編

活動を現地に引き継いで

s_IMG_3870販売初期のホットパックは20cm×25cmのスクエア型のみでしたが、購入者からの要望に応えて少しずつラインナップを増やしていきました。

スクエア型の次に登場したのは、肩や腰に巻ける10cm×60cmのロング型。スクエア型をそのまま長くするだけだと中身が下に寄ってしまうので、中を5つの小さな袋で区切りました。

その次の製品は、玄米とラベンダーハーブ入りのアイピローです。表面はダブルガーゼで、温めて目の上に置くとじんわり疲れがほぐれます。裏面は肌触りのよいサテン地にして、夏でも使えるようにしました。

滝口さん:そうした工夫も『ママSUNスマイル』のみなさんが試行錯誤して考えてくれたものです。私は「こういうのつくりませんか」と声をかけただけ。みなさん、すごく頼もしいんですよ。

s_IMG_3341ブログの更新や経理、材料の調達など『ボランティアセラピスト・ネットワーク』が担当していた作業も、少しずつ『ママSUNスマイル』のメンバーに委譲していきました。いまではほとんど全ての作業を『ママSUNスマイル』が行っています。パソコン作業など決して得意ではない作業にも前向きに挑戦し、協力しあっているそう。

支援から始まった活動を現地に委譲するのは中々難しいものですが、『ママSUNスマイル』では自然な形で活動のシフトが進んだようです。

滝口さん:みなさん、人間ができていて大人なんですよね。慣れない避難所や仮設暮らしで辛いこともあったと思うんですけど、悲壮感を全く出さず前を向いていましたから。まさに団体名通りの方々です。いい人と出会えてよかったなぁと、心から思います。

支援された人が、次に被災した人を支援する

s_IMG_3882今後の見通しが立たず働きづらい状況の中、少しでも収入を得る機会になればと始まった米ぬかホットパックづくり。活動を通してメンバーの仲は深まり、気持ちを共有できる仲間になりました。

ただ、時間の流れと共に、活動の意味合いは少しずつ変化しています。広野町に戻ったり外で働きはじめたりとメンバーの状況も変化し、全員で集まる機会は減っているといいます。

滝口さん:必要がなくなったら、無理して続けていただかなくてもいいと思っているんです。負担になってしまっては元も子もありませんから。

でも、『ママSUNスマイル』のみなさんは「活動は楽しいし、続けたい」と言ってくれてします。「購入してくれる方の期待に応えたい」という気持ちもあるんじゃないかな。やっぱり、つくったものを喜んでもらえるのは嬉しいことですよね。それがモチベーションの源になっているんだろうと思います。

s_IMG_33682014年に広島で土砂災害が起こったときはメンバー同士で話し合い、35個のホットパックを現地へ寄贈しました。「3.11のときは自分たちが助けられたから、わずかでも恩返しがしたい」「いまも避難されている方はきっと寒いだろうし、ホットパックで温まってもらえたら」と考えたからです。ホットパックは広島でも好評で、現地の支援団体から100個の注文が入りました。大忙しになりながらも、心を込めてつくったといいます。

2015年に起きた関東・東北豪雨では、メンバーのひとり・鈴木美貴さんが『ボランティアセラピスト・ネットワーク』のセラピストたちと一緒に茨城県常総市を訪問。滝口さんに習ったハンドマッサージをたくさんの人に施術しました。

滝口さん:「ハンドマッサージしかできないけど、気持ちで参加します!」って言ってくれたんです。こういうときに大事なのって、結局は気持ちですよね。一緒に来てくれたことがとても嬉しかったです。

支援された人が、次に被災した人を支援する。そんな循環が生まれているのですね。

s_IMG_2214滝口さんは現在でも、福島や宮城に通ってボランティアマッサージを続けています。今後は頻度が減るかもしれませんが、一年に1〜2度は様子を見に行こうと考えているそう。

滝口さん:せっかく親しくなった方々なので、やっぱりお会いしたいし、顔を見に行きたいんです。ボランティアを越えて、“親しい地域ができた”という感じです。復興には長い時間がかかるから、忘れないでつながっていたい。そこに頑張っている人がいて、何かできることがあるなら、お手伝いしたいと思います。

2015.11.16