つくり手インタビュー
『ママSUNスマイル』のメンバーは全部で7人。とても明るく仲良しだというみなさんに会いに、福島県いわき市の仮設住宅を訪問しました。
ホットパックの良さを伝えていきたい
——みなさんは全員広野町出身なんですか?
犬塚さん:はい。震災後は避難所を転々として、半年後にここの仮設住宅に落ち着きました。朋美さんは埼玉の避難所にいたときにアロママッサージのボランティアで来てくれて知り合ったんですが、福島にまで追いかけてきてくれて。ほわんとした柔らかい雰囲気の方なのに、行動力があっていろんなことができて、すごくパワフルなんですよ。

右の女性がリーダーの犬塚さん
——朋美さんからホットパックを贈られたそうですが、使ってみていかがでしたか?
犬塚さん:それがすごく気持ち良かったんです。こんな素朴なもので温かくなるんだって驚きました。慣れない仮設暮らしで夜はなかなか眠れなかったんですが、ほかほかのホットパックを抱いて布団に入ったらいつの間にか寝ちゃって、朝も寝覚めが良くて。
感想を朋美さんに伝えたら「じゃあご自身でつくってみませんか」と提案され、つくってみたら「良かったらこれを売ってお仕事にしませんか」ということになって、「ママSUNスマイル」を発足しました。
——最初からこの7人で製作されていたんですか?
犬塚さん:最初は仮設住宅に入居している人に広く声をかけてつくったんです。でも、販売してお金をいただくとなるとやっぱりクオリティが必要ですよね。少しずつ抜けていって、「ホットパックの良さを伝えたい!」「楽しく続けたい!」と残ったのがこの7人でした。
−−元々お知り合いだったんですか?
犬塚さん:それが全然。会えば挨拶をする程度でした。
——製作するとき心がけていることはありますか?
犬塚さん:できあがりの可愛らしさ、綺麗さにはこだわっています。応援していただいていることに感謝の気持ちを忘れずに、使う方の喜ぶ顔を想像しながら心を込めてつくっています。
−−活動を続けてきて嬉しかったことがあれば教えてください。
犬塚さん:手づくりの良さ・温かさ、人の心の優しさをたくさん受け取りました。応援してくれている方々からのメッセージはやっぱり嬉しいです。メッセージをいただいたときは、みんなにも転送して共有しています。それがやる気につながるので。
——たとえばどんなメッセージが届くんですか?
セラピストの方も購入してくださっていて、施術中にお客様の体に乗せるそうなんですね。「お客様も喜んでくれています」と言ってくださって。「そんなに買ってもらっちゃって大丈夫?」と心配になってしまう位リピートしてくださる方もいるんですよ。
——一度使うとホッカイロとは全然違うことがわかりますね。
犬塚さん:そうなんです。腰痛、肩こり、不眠ぎみ、冷え性に有効です。使ってみるとこの良さを実感していただけるはずなので、ぜひひとつ手にしてみてほしいです。
——活動を通して生まれた変化はありますか?
仲間ができたことです。こうしてひとつのことに取り組んでいると連帯感が生まれるんですよね。活動以外でも一緒に出かけたりするようになって、避難生活でありながらも楽しく過ごすことができました。こういう機会がなかったら家に籠りきりになっていたかもしれないし、相当辛かったんじゃないでしょうか。同じ境遇の同世代ママさんの集まりだから悩みも楽しみも共有できました。
——滝口さんたちが行っていた事務作業を引き継いだと伺いましたが、どうしてそうしようと思ったのですか?
犬塚さん:ボランティアマッサージに支えられて頑張ることができました。その後この仕事を勧められて、最初はつくるだけでしたが、1年、2年と経つうちに「自立していかなければ」という気持ちになったんです。少しずつセラピストさんたちにお願いしていた作業を引き継いで、自分たちだけで運営できるようにさせていただきました。本当に感謝です。
——今後の展望を教えてください。
犬塚さん:細々とネットでの注文をいただいて製作していますが、もう少しママたちの収入を増やし仕事としてできるようにしたいと思っています。教会で扱ってもらえる、東京のお店で販売してもらえる、といった話もあって、夢をいただいています。
また、いままで収益金の一部を「広野町未来を背負う子ども基金」等に寄付してきましたが、今後はまちの復興に力を注いでいる団体等にも寄付して役立ててもらいたいと考えています。
——全国の方に向けて、メッセージがあればお願いします。
犬塚さん:いままで広野町民のためにご支援いただいたみなさま(マッサージボランティアの方々やホットパックを購入してくださった方々)、いまもなお見守りつづけていただいているみなさま、本当にありがとうございます。感謝の気持ちを忘れず、これからもホットパックの良さを伝えていきたいと思います。
2015.12.4