つくり手インタビュー
JR浦宿駅から徒歩3分ほどの場所にある、クリーム色の可愛らしいトレーラーハウス。これが『恵プロジェクト』の工房です。中では10人前後の女性たちが、ミシンやパソコンに向かっていました。てきぱきと手を動かしながらも口元には笑みを浮かべ、時折笑い声が聞こえてきます。つくり手のみなさんにとって『恵プロジェクト』はどんな存在なのか、聞いてみました。
嬉しいことも心配なことも分かち合って
ーーみなさんは女川で生まれ育ったんですか?
つくり手さん:いいえ、みんな女川に嫁に来たんですよ。石巻とか、渡波とか。それぞれ自宅再建中です。
ーーなぜ『恵プロジェクト』に参加しようと思ったんですか?
つくり手さん:元からこういう作業が好きだったんです。
つくり手さん:私は新しい職を探してるときに友達が紹介してくれて、楽しそうだなと思って。
ーーみなさん縫製の仕事は未経験だったと伺いましたが、大変だったことはありますか?
つくり手さん:大変だったこと?うーん…大変というよりも楽しいですね。加藤さんは面白いし、美味しいし(笑) よく料理をつくってくれるんです。
加藤さん:今日はここでサンマの佃煮を煮ているんですよ。メンバーのひとりがサンマをお裾分けしてくれたから、みんなのお土産にしてもらおうと思って。
ーー『恵プロジェクト』に参加してからの変化はありますか?
つくり手さん:変化はあります…けど、どう説明したらいいのかな、難しいな。体重は変化しています、みんな(笑)加藤さんの料理のおかげで、育ち盛りになっちゃって。
つくり手さん:女の人の職場ってこそこそ陰口を叩いたり、いい事も悪いことも面と向かっては口に出さなかったりするところが多いけど、ここでは言いたいことをストレートに言って、さっぱりしているんです。そういう環境にいられるのはありがたいなと思います。
ーー勤務形態は、パートタイマーということになるのでしょうか。
加藤さん:そうですね。できる範囲で出勤してもらっています。お給料は販売した製品の利益から。運営メンバーのお給料は、教会からの寄付で成り立っています。
ーー運営メンバーは、ローナさんのほかに誰がいるんですか?
ローナさん:チャミとジュリアンがいます。
チャミは、永井みぎわさんという女性のあだ名です。このプロジェクトを始めるとき、海外でも日本でも販売するので、両方の言葉や文化を理解できる人が必要でした。チャミは日本人だけど英語圏で育って、カンボジアで働いていたのでパーフェクトだと思いました。ちょうどカンボジアでの仕事の契約が切れるところだったので、マネージャとして仲間になってもらいました。
ジュリアンは日本人とアメリカ人のハーフで、祖父母は多賀城に住んでいました。インターンで2か月ほど手伝ってくれてアメリカに帰りましたけど、「一緒に働くのどう思う?」と戻ってきてもらいました。いまはマーケティングを担当してもらっています。
ーーつくり手のみなさんはクリスチャンではないんですか?
加藤さん:違いますね。ローナもほかのメンバーも、支援の代わりに入信を迫るようなことは一度もしていません。「これをやってあげるからこれをして」じゃない。見返りを求めないんです。だから気持ちよくつき合えるんでしょうね。
ただ、キリスト教的な要素を取り入れている部分もあります。たとえば朝は朝礼ではなく「分かち合い」というのをするんですよ。家族のことや心配ごとを共有して、みんなで祈るんですね。「息子が風邪を引いていて心配」という人がいれば、「じゃあ今日は早めに帰りな」とみんなで気遣ったり。そういう時間があることで、場が和んでいる側面はあると思います。
ーー工房の雰囲気がとても明るくて楽しそうだな、と感じました。
加藤さん: 仙台に移住したメンバーがいるんですが、食事会や夏祭りのときにはわざわざ仙台から来てくれて。離れても関係性が続いていくのがいいですね。
誕生日会や歓迎会のときはみんなでサプライズを仕掛けるんですよ。みんなでクッションをおなかにいれて「もうすぐ生まれるの」なんてふざけたり。マネキンにもミーナちゃんと名前をつけて、着飾っています。いつも笑ってばっかりの、楽しい職場ですね。
2015.9.16