つくり手インタビュー
磐城高箸を製造面で支えるのは、工場長の蛭田真浩さん。工場長というと年配の方をイメージするかもしれませんが、蛭田さんは弱冠27歳。この仕事を選んだ理由や、仕事の醍醐味について伺いました。
木は生き物だから難しい。でも、楽しい
——蛭田さんは、なぜ磐城高箸に入ったんですか?
蛭田さん:復興イベントで高橋さんに出会ったんです。ちょうど『希望のかけ箸』ができた位のタイミングだったので、自分も復興の力になれたら、と思いました。大学を卒業して、本当は公務員試験を受ける予定だったんですが、高橋さんの話を聞いて工場見学もさせてもらって、やってみようと。3年ほど前のことですね。
——創業間もなくの頃に入ったんですね。
蛭田さん:そうですね。最初は高橋さんと、鳥居塚さんと3人で。木に関しては素人だったので最初は手探り状態でしたが、鳥居塚さんは長いこと造林会社で働いていた人なので、色々教えてもらいながら覚えてきました。

経験豊富で頼りになる鳥居塚さん
——いわき出身ということですが、林業が衰退していることは感じていましたか?
蛭田さん:いえ、関わりがなかったので、特に感じたことはありませんでした。でも、丸太を仕入れるときに林業家の人と話をしたりすると、「本当に厳しい状況なんだな」と感じます。
——仕入れもされるんですね。
蛭田さん:はい。割り箸は細いから、間伐材の中でも特に目が詰んでいるものを選んでいます。でも、木の質を見るのは難しいですね。良さそうに見えても、割り箸にしてみるとぼそぼそしていたり。産地の違いもありますけど、土壌や手入れの仕方でも変わってきます。木は生き物だから。でもその反面、色々見たり聞いたり、考えたりするのが楽しいんです。
——丸太からの一貫製造ですもんね。
蛭田さん:一般的な割り箸は、角材にしたときの端を使っています。だからほかの工場とは全く工程が違うんです。製材屋さんに頼まず、丸太からワンストップで製造して、社内にデザイナーまで抱えているのはうちだけですね。
——ご自身でも、磐城高箸の箸は使っているんですか?
蛭田さん:はい。不良品を持ち帰って家で使っています。いまはもう、うちの割り箸じゃないとダメになっちゃいました。持ちやすいし、手触りもいいし。
——普通の割り箸だと、冬場の乾燥しているときは手が痛くなったりしますよね。『希望のかけ箸』を持ってみて初めて、それが小さなストレスになっていたことに気づきました。
蛭田さん:直売会では、裸箸を持っていって触ってもらうんです。みなさん「普通の割り箸とは全然違うね」って驚くので、それが嬉しくて。僕もこの仕事に就いて初めて、割り箸にこんなにたくさんの種類があることを知りました。割り箸の世界は奥が深いですね。
——今後の展望はありますか?
蛭田さん:いまはまだ手作業が多くてあまり量産できていないので、工程を改良して、もっと量産できる体制をつくりたいと思っています。
——地域の林業が潤うためにも、たくさんの人に磐城高箸の割り箸を手にとってもらえるといいですね。お話を聞かせていただきありがとうございました。
製作工程
まずは、仕入れた丸太の皮を剥きます。
長さを測ってチョークで印をつけ、チェーンソーで切ります。
切った丸太を、更に8等分にカットします。ショートケーキ型ですね。
ショートケーキを板にして、割り箸の長さに揃えます。
不良品や木屑などを薪ボイラーで燃やした熱を使い、
乾燥室で水気を飛ばして板を乾かします。
乾燥した板を小板にして、割り箸サイズにカット。
中央に切り込みを入れて、成形します。
端材や不良品は細かく刻まれ、枕のチップになります。
本当に、ゴミが一切出ていないことに驚きます。
焼き印を入れます。
窪みに焼き印を入れることができるメーカーはごくわずかなのだとか。
障がい者施設のみなさんにパッケージングしてもらい、完成!
2015.2.9