物語後編

里親さんと一緒に、面白いことしよう

赤ちゃん用の靴下でつくられた『ミニおのくん』

赤ちゃん用の靴下でつくられた『ミニおのくん』

おのくんの人気はとどまるところを知らず、現在までに2万匹以上が旅立っていきました。つくり手のおかあさんたちは毎月800〜1000匹のおのくんを生み出していますが、それでも足りず、注文から8か月〜一年待ちの状態なのだとか。

ただ、それはFAXで注文した場合。仮設住宅の集会所に来れば、生まれたてのおのくんに会い、里親になることができます。平日でも10人以上、休日になるとひっきりなしに来客があり、集会所はとても賑やか。おのくんを“里帰り”させてくれる里親さんも多いそう。おかあさんたちはそうした出会いや交流をとても喜んでいます。

里親さん同士の交流も自然に生まれ、全国に里親会が発足されました。里親会の集まりでは、おのくんを連れてレストランに集まったり、写真を撮りあったりと、楽しいコミュニティが生まれているようです。

里親会の福岡支部長・清藤さんも、何度もおのくんを“里帰り”させているひとり。つくり手のおかあさんたちやおのくんの兄弟たちの写真を撮り、福岡支部のメンバーに共有しているそう。

里親会の福岡支部長・清藤さんも、何度もおのくんを“里帰り”させているひとり。つくり手のおかあさんたちやおのくんの兄弟たちの写真を撮り、福岡支部のメンバーに共有しているそう。

里親さんとの結びつきを強化するため、『タヅバナス』という名のファンクラブも誕生しました。タヅバナスとは、“立ち話”が訛った言葉です。入会すると、おのくんのメディア出演情報や、イベントの案内、メンバーだけの裏話といった最新情報を知ることができます。また、新しいおのくんグッズやイベントをみんなで一緒に考えたりもするそう。

また、おのくんの着ぐるみ、通称『でっかいおのくん』が里親さんに会いに全国を回る『おのくんツアー』、里親さんがおのくんの様子を撮影して投稿する写真コンテスト『おのコン』など、楽しい企画がどんどん実行されています。「里親さんと一緒に、面白いことしよう!」が活動の合い言葉です。

おのくんを通して、東松島のまちおこし

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当初、おのくんの活動は“仮設住宅がなくなったら終わり”と予定していました。でも、里親さんたちがおのくんを可愛がってくれている姿に勇気づけられ、おかあさんたちは続けることにしたといいます。

仮設住宅終了後も集まれる場所として、道の駅ならぬ『空の駅』を建設しようという計画も動き出しました。東松島の特産品が味わえたり、東松島の魅力を知ったりできる交流拠点を目指し、クラウドファンディングを実施しています。

武田さん:既に仮設住宅を出たおかあさんたちもいますが、全員が集会所に通って製作を続けてくれてるんですよ。集まるのが楽しいし、おのくんを待ってくれている人たちが全国にいるから。でも、私ひとりだったら、続けようとは思えなかった。新城さんやみなさんが手伝って、応援してくれたおかげです。

東京と陸前小野を行ったり来たりしていた新城さんは、「遠隔だとやれることは限られているし、来てみないとわからないことがある」と陸前小野に引っ越したそう。おのくんの活動や、東松島のPRに本腰を入れて取り組んでいます。

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新城さん:東松島は津波の被害を大きく受けたのに、松島と石巻に挟まれていることで、あまり知られていない地域なんです。観光地として有名で、津波の被害を受けなかった松島と混同されがちだし、ボランティアはみんな石巻に行ってしまう。

集会所に来ればおのくんの里親になれるようにしているのは、ひとりでも多くの人に東松島に来てもらい、知ってもらうためなんです。

里親さんたちに東松島のまちを探索してもらおうと、おのくんが描かれたタンブラーを持って市内の提携店に行くとお得なサービスが受けられる『MACHI BURA』というサービスを実施中。今年1月には、写真絵本『おのくんとおさんぽ』も出版しました。おのくんがまちに飛びだし、きょうだいたちから東松島のことを教えてもらうというストーリーです。

東松島の魅力が伝わる写真絵本「おのくんのおさんぽ」。

東松島の魅力が伝わる写真絵本「おのくんのおさんぽ」。

新城さん:おのくんを、東松島のいろんなものを紹介できるキャラクターに育てていこうとしています。そのためには、おのくんの知名度、人気度をもっと高めていかないといけません。里親さんたちと一緒に意見を出し合って、楽しみながら活動をつづけていこうと思っています。

2014.12.20