物語後編

日々、小さな嬉しいことがある

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高澤さんは郡山生まれで、震災前は他県にいました。何か復興の役に立てないかと地元へ戻り、縁あってJDF被災地障害者支援センターふくしまに合流。福祉に携わるのははじめてですが、参加者との交流がとても楽しいのだといいます。

高澤さん:私はドーナツが好きなんですが、普段全然喋らない無口な子が、「高澤さん好きでしょ」と恥ずかしそうにしながらドーナツのチラシを持ってきてくれたりするんです。その気持ちが嬉しくって。

それに、その日お願いした仕事が終わった子が、自分から「これやっていいですか」って声をかけてくれたりすると、わぁって思いますね。日々、小さな嬉しいことがいっぱいあるんです。

eventあるとき、ファミリー向けイベントで製品の販売を行ったことがありました。参加者のみなさんも売り子として店頭に立ちましたが、イベント全体との雰囲気が合わず全く売れません。高澤さんは頑張って声を張り上げましたが人が寄り着かず、落ち込んでしまったそうです。

高澤さん:胸にぎゅうっときちゃって。しょんぼりしていたら、「じゃあぼくががんばるよ」とみんなが一所懸命声を出してくれたんです。結局売れなかったけど、「客層が違ったんだね、次はがんばろう」って励まし合って、前を向くことができました。

活動に参加するうちに働く力をつけ、就職先が見つかった人もいます。地域の福祉作業所や企業に移った「卒業生」は、現在8名。高澤さんたちはちょっと寂しい気持ちを抱えつつ、喜んで見送っています。

支援を必要な人に合わせて新しい形をつくる

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ふたば製作所では、火・金を「ふたば製作所を支えるボランティアの日」にしています。就労意欲はあるのにさまざまな理由から働けずにいる若者たちに、封筒の回収などを手伝ってもらっているのです。

高澤さん:学校や企業を回ってもらうんですが、すごーくがんばってくれています。「おはようございます」も言えなかった方が、「しんせいから来た◯◯です、いつも封筒ありがとうございます!」って元気に挨拶して回っているんです。

ボランティアをすることで、被災者を助けているという自信が生まれるんですよね。支えることで支えられている。支えあう。さまざまな人が関わることで、そういう良い関係が生まれています。

もともと、ふたば製作所の活動には障がい者だけが参加していたわけではありません。障がいはなくても、コミュニケーションが苦手だったり、心の問題を抱えていたりして、仮設住宅に籠りがちになってしまう人はたくさんいたのです。障がい者手帳を持っていない人たちも受け入れられるよう、あえて福祉事務所という形はとらずに活動してきました。

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制度に合わせて利用できる人を狭めるのではなく、支援を必要とする人に合わせて新しい形をつくっていく。活動の根幹には、そうした想いがあるようです。

JDF被災地障がい者支援センターふくしまは『福島県障がい者自立支援拠点整備事業』を国から委託して活動をしてきましたが、人々が仮設住宅から復興住宅へ移りはじめているいま、いつまでも県が予算を組んでくれるとは限りません。しかし、まだ支援を必要としている人たちはたくさんいます。

継続して支援ができるよう、2013年7月には『NPO法人しんせい』を立ち上げました。行政からの委託事業を受託しながら、同時に自主事業を展開して運営を安定させようと励んでいます。

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高澤さんは最後に、「私、大好きな言葉があるんです」と、つながりのかばん28のパンフレットに書かれた一節を紹介してくれました。

住み慣れたふるさとを離れて、3年が経ちました。
帰れるのか、帰れないのか…
この先、どこでどんな風に暮らしていくのだろう…
いつもそんなことばかり考えていました。

だけど。
私たちもそろそろ明日の夢を持ってみようと思います。
双葉のみんなで力を合わせてがんばると決めました。

ふたば製作所は使用済みの封筒でかばんをつくります。
そのかばんに明日の夢をいっぱいつめます。
未来はきっと笑顔でありますように!

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高澤さん:この言葉が大好きで、ほんとにこの想いで頑張っていきたいなと思います。一歩一歩進んでいるので、遅いと思われちゃうかもしれないけど…まだまだみなさんのお力添えが必要なので、応援してもらえると嬉しいです。

2014.12.3