物語後編

ホテルの浴衣を再生した、おしゃれな布草履

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“再生の達人”とも噂される久保田さんの元には、不要となるさまざまな素材の情報が送られてきます。あるとき、「リゾートホテルの浴衣を入れ替えるので寄付したい。再生する企画を考えてほしい」という相談が舞い込みました。生地にはホテル名がばっちり入っているので使い道に悩みましたが、裂き編みにすれば目立たなくなる布草履をつくることにしました。

久保田さん:東京のボランティアチームのおかあさんたちに布草履をつくってもらい、その売上を東北でワークショップを開く資金にしようと企画しました。

被災した方々が仮設住宅から災害公営住宅に移動する時期で、これまでのご近所さんが変わったり家族が分断したりと新たな問題が出てきています。まだまだワークショップは現地で必要だと感じています。まずはこちらで布草履を販売して資金を集め、ワークショップで技術を伝え、少しずつつくり手さんを被災地へシフトしていこうと思っています。

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鼻緒やかかとには古いデニムを使用。職人がお財布を製作するときのサンプル革でタグもつけました。布草履というと民芸調のものが主流ですが、男性でもかっこよく履けるデザイン。鼻緒に編*花をつければ女性らしい雰囲気にもなります。

更に、冬でも履けるよう、編*花を組み合わせたカバーも製作しました。取り外しできるので、夏でも冬でも使えます。カスタマイズして履けるところがこの布草履の魅力です。

久保田さん:布草履は健康にもいいので、子ども用も製作しています。最近の子どもたちは鼻緒のあるものを嫌うけど、親指と人指し指の間のツボの刺激にもなるし、ここに力を入れて足を持ち上げることで筋肉も育ちます。ぜひ、子どもたちにも履いてもらいたいですね。

売れ行きも好調で、石巻で布草履を製作するワークショップを開くことができました。これから少しずつ、ワークショップを増やしていく予定だそうです。

現地のニーズに合わせて、活動の形を変えてきた

¥IMG_3918『つくるプロジェクト』の活動内容は、現地の状況やニーズに合わせて、どんどん形を変えていきました。久保田さんが最初に考えていたこととは全く違うことをしているといいます。

活動初期は、現地に雇用を創出することを目的としていました。リーダーになってくれる人を探していましたが、相馬には若い人が少ないし、おばあちゃんたちはみんなを取りまとめたりすることは苦手です。そのため、現地の人だけで回していくことは断念しました。

久保田さん: でも、それでいいと思っています。元々、自分がしたいことを押し通すんじゃなくて、相馬の人たちの隙間を埋めるようなことができたら、と考えていました。編*花も再生布草履も、本業の建築とはなんの関係もないですからね(笑)

ニーズをひとつひとつ確かめながら進めてきてこの形になったんだから、それがみんなにとってちょうどいい形なんじゃないかな、と。

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ただ、言い換えればそれは、今後も現地の変化やニーズによって、形が変わる可能性もあるということ。製品になったものをプレゼントすると、おばあちゃんたちは喜んで身につけ、「友達にもあげたい」「こういうのもつくれるかな」と目を輝かせるそう。そのうち、自分たちで商品を考え、色を合わせることができるようになるかもしれません。

また、福島の内陸のほうで編*花を販売すると、若いおかあさんたちが「可愛い、自分でもつくりたい」と言ってくれるといいます。海側から山側へ移住し、生活環境の変化にストレスを感じている人も多いはず。そうした人たちが編*花の活動に参加し、やがて運営側になることも十分ありえます。

久保田さん:福島は、商売的に考えるとどうしても食べ物を扱うのは厳しいし、手仕事が広まっていく必要があると思います。おばあちゃんとおかあさんの世代で協力してできるようになったら、嬉しいですね。

ものづくりで、人と人とがつながった

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震災前までは、東北の人たちとものづくりをしようなんて夢にも思わなかったという久保田さん。でも、いまは東北のことがとても身近になったといいます。

久保田さん:よかったなぁと思うのは、ものづくりを通して都会と地方をつなげられたこと。イベントを開催すると、お客様は純粋に商品の可愛さに惹かれてブースに立ち寄ってくれます。そこから話をしたり、ワークショップで手を動かしたりしているうちに、相馬のこと、おばあちゃんのことに興味を持ってくれるんです。

かしこまって「福島の話をします」と言っても、その言葉が届くのは限られた人だけ。でも、「可愛いから手にとったら、相馬のおばあちゃんたちがつくったものだった」という順番なら、より多くの人に伝えることができます。被災地に関心がない人にも裾野を広げるのがデザインの力。久保田さんはそう考えています。

久保田さん:相馬は震災によって人とのつながりが分断されてしまったし、過疎化も加速した。でも、それは都会でも起きていることです。東北で行っていたことがこれから参考になるかもしれない。まだどうなっていくかわからないけど、使われていない材料を再生すること、ものづくりで人をつなげることは、ずっとやっていきたいですね。

 

2014.11.10