物語前編

3児の母の青木愛さんは、ママになった女性が輝きつづけるために、世界中から買いつけたお洒落なマタニティウェアを販売するブランド『ヴィリーナマタニティ』を主宰しています。
震災後、被災地のママたちへの支援が行き届いていないことを知った青木さんは、現地の団体と一緒にプロジェクトを立ち上げることに。それが「石巻×VIRINA」の始まりでした。

ファッションを通じて女性が輝くお手伝いがしたい

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青木さん:ファッションは、女性の人生を変える力があると思うんです。素敵な服を纏うことで美しくなり、気持ちが明るくなって幸福感を味わえる。そのお手伝いを、ずっとしてきました。

青木さんの元々の仕事は、ファッションエディターでした。ハースト婦人画報社に入社して『ヴァンサンカン』や『ヴァンテーヌ』の編集に携わった後、渡米して憧れだった『エル・ガール』の編集部へ。プライベートでは第一子を妊娠し、ニューヨークでマタニティライフを送りました。

青木さん:ニューヨークには、華やかで見栄えがよく、着ていると褒められるようなマタニティウェアがたくさんありました。妊娠中でも変わらずおしゃれを楽しむことができたんです。でも、日本に帰ってきたら妊婦さんが着られる可愛い服が全然なくて。そのことにとても驚きました。

帰国後、ハースト婦人画報社に戻り『エル・ジャポン』の担当になった青木さんは、紙面で海外のおしゃれなマタニティブランドを紹介しました。でも、1〜2P取り上げるだけでは、大きな変化にはつながらない。ママになった女性がおしゃれを楽しみキラキラと輝くことを応援したい…。青木さんは会社を辞め、海外から買いつけたマタニティウェアを提供するブランド『ヴィリーナマタニティ』を立ち上げました。

青木さん:妊娠と出産が私の人生の大きな転機となりました。編集者としては、エルで働くという夢も叶い、やるべきことはやりつくしたという満足感があったんです。だから、次のこと、自分にしかできないことがしたいと思いました。

お金を送れば、現地のニーズに合ったものに変えてもらえる

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青木さんはヴィリーナの仕事に夢中になり、会社の規模は少しずつ大きくなっていきました。震災が起きたのは、起業から5年が経ったときのこと。青木さんはすぐに行動を開始したといいます。

青木さん:まず行ったのは、おくるみやミルクボトルなどの物資の送付です。でも、現地にとって一番役に立つのはお金だと思いました。

ヴィリーナではそれまでも途上国の支援活動をしてきました。最初は、服を集めて送るなどヴィリーナらしい支援をしたいと思っていたそう。でも、輸送や保管にはお金がかかるし、宗教やサイズの問題などで現地では役に立たない服も出てきます。その点、お金なら現地で必要としているものに変えることができるので、無駄がありません。そこで、売上の1%をジョイセフのホワイトリボン運動に寄付し、途上国の妊産婦と女性たちの支援活動に協力してきたのです。

青木さん:今回もまとまった金額を被災地に送りたいと考え、ヴィリーナのノベルティとして人気だったミニトートバッグをチャリティー製品として販売しました。ひとつ2,100円で販売し、そのうち2,000円を現地へ寄付する形で、震災から一ヶ月後には400万円の義援金を送ることができました。

2000個のバッグをすぐに用意することはできないため、先にお金を送ってもらい、数ヶ月後に商品を送付する形をとったそう。ヴィリーナとお客様とのあいだに強い信頼関係が築かれていたことがわかります。

青木さん:でも、これはあくまで緊急支援です。その時期が過ぎても、現地ではたくさんの問題があることは想像できました。何かしら継続的な支援をしていけないかと思っていたときに、『やっぺす(石巻復興支援ネットワーク)』代表の兼子さんが、ヴィリーナのオフィスにやってきたんです。

(左が兼子さん)

(左が兼子さん、右が青木さん)

それは、震災から1年が過ぎた2012年6月のことでした。

数字と色の組み合わせにメッセージを込めて

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以前もこのサイトで紹介しましたが、『やっぺす』は宮城県石巻市で立ち上がったNPOです。支援の手が届かず取り残されがちな女性たちのために、仕事と生きがいを生み出す活動をしていました。

青木さん:兼子さんはヴィリーナの活動を知り、「石巻のママたちがつくった製品を販売してくれませんか」とご提案にいらっしゃったんです。その製品はとても素敵でしたが、もっとヴィリーナのお客様に好まれる製品をつくったほうがヒットすると思いました。そこで、「一緒にコラボ製品を開発しませんか」と逆提案したんです。

青木さんはさっそく、編集者仲間だった影山桐子さんに協力を依頼しました。影山さんは手先が器用でセンスがよく、友人たちと手芸部を結成し素敵な作品を生み出していたのです。そのことを思い出した青木さんが「何か、可愛くて実用的な製品がつくれないかな」と相談したところ、IDホルダーを提案されました。

青木さん:IDホルダーなら、会社はもちろん、幼稚園や学校を訪問するときも使えますよね。鍵をつけてもいいし、そのままネックレスとしてつけても可愛い。材料を仕入れて、ああでもないこうでもないと試作を繰り返しました。

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そうして形になったのが、1から9までの数字のチャームがついた9種類のIDホルダー。それぞれリボンの色も違います。元編集者で、現在はオーラソーマサロンを主催している志村香織さんに数字と色の持つ意味を教えてもらい、一つひとつにメッセージを込めました。たとえばアッシュグレー&ホワイトのリボンの「No.1」には、こんな説明が書かれています。

 


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2014.8.28