つくり手インタビュー

s_IMG_5161_2石巻×VIRINAの製品を製作しているのは、石巻復興支援ネットワーク(通称:やっぺす)のママたち。
以前このサイトでご紹介した「Amanecer」のつくり手でもあります。前回取材したのは約一年前。あれからどんな変化があったのでしょうか?代表の兼子佳恵さんと、つくり手のママたちにお話を伺いました。

震災から時間が経ったいまだからこそ、必要なこと

ーーこのプロジェクトは、兼子さんが広尾のVIRINAを訪問したことから始まったそうですね。

兼子さん:そうなんです。青木さんもママだし、復興支援をしていらしたので、何か一緒にできないかと思いまして。おしゃれなお店なので、最初はちょっとドキドキしました(笑)

青木さんと話をしている中で、彼女だからできること、私たちだからできることが見えてきて、いまの形になりました。

ーーIDホルダーは、ご自身でも使っているんですか?

兼子さん:はい。「No.1」「No.7」「No.9」と、3つ持っています。

こちらは「NO.9」のIDホルダー。「よりよい世の中のために、誰かの役に立ちたいと願っているあなたに」というメッセージが込められています。

こちらは「NO.9」のIDホルダー。「よりよい世の中のために、誰かの役に立ちたいと願っているあなたに」というメッセージが込められています。

ーー3つも!それぞれデザインが違って、可愛いですもんね。

兼子さん:それに、番号に意味があるので、そのときのシーンや自分の役割に応じて使い分けています。

震災後にいくつかの事業を始めたけど、私ひとりでできたことって何もなくて…。たとえば、震災で亡くなった友人や知人がやっていたら、きっともっとできたと思うんです。そんなことをぐるぐると考えてしまうときに、背中を押してくれるひとつのアイテムですね。

ーー身につけることで気持ちが明るくなったり、引き締まったりするんですね。

兼子さん:「3年やってきて、いまでもそんな状態なの?」と言われちゃうかもしれないけど、ふとしたときに無力感を感じてしまうんです。私にできたことって何かあるのかな、って。

ーー強いリーダーシップで引っ張り上げていくタイプではないかもしれませんが、そんな兼子さんだからこそ、周囲の人が「兼子さんを支えないと!」と活動に参加してくれるのではないでしょうか。

兼子さん:そうだったらいいですね。常勤のスタッフにママたち、青木さんのように一緒にプロジェクトを進めてくれる人たち、支えてくれる企業さんや個人の方。ほんとに多くの方に支えられています。

私にできるのは、一人ひとりに寄り添い、前に進むために必要なものを、支えてくれているみなさんと一緒に考えてつくりあげていくことなのかな、と思います。時間が経つにつれて、苦しむ人たちも出てくるだろうから。

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ーー時間が経つにつれて、ですか?

兼子さん:震災からしばらくは、環境の変化に慣れるのに必死で、考える時間がなかった人も多いと思うんです。それが、少しずつ余裕が出てきて、小さな地震が起こったりする度にあの日失ったものを思い出してしまう。私自身がそうなんです。

周囲の人が前を向いて「いつまでも止まっていられない」と頑張っている中で、動けずにいる自分に自己嫌悪を抱いてしまう人もいます。だから、一人ひとりが主役になれる場所、参加できる活動を、これまで以上につくっていかなくちゃいけないと思っています。

ーーやっぺすは、さまざまな形で関わる場を提供していますよね。この一年で、新しい試みは何かありましたか?

兼子さん:被災地の社会的課題を解決するための人材を育てる講座を開催しました。卒業生たちや、震災後起業された方々が集えるように、このコワーキングスペースもつくったんです。

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2014年7月にオープンした『Coworking!@Ishinomaki』。月額利用料は8千円。ドロップインで利用もできます。

ーー会員ではない人も、ふらっと利用できるスペースなんですね。

兼子さん:日によっては、創業・経営に関する無料相談を行っているんですよ。たくさんの人がつながる場、アクションを起こすきっかけになる場であってほしいと思っています。

ーー自分たちの地域の課題を自分たちで解決しようと起業する人がたくさん出てくるというのは、心強いですね。

兼子さん:特に女性の起業を応援したいですね。こどもがいても働ける環境づくり。内職もそうなんです。「やりたいんですけど」と問い合わせてくださる方がたくさんいるんですよ。製作しているものが可愛いとやりがいもあるし、こどもたちがいてもできる仕事だし、ニーズがあるんですね。だから、もっと仕事をつくっていかないといけません。

講座の様子。和気あいあいとした雰囲気です。

講座の様子。和気あいあいとした雰囲気です。

ーーママたちの内職スキルも、あがったんじゃないですか?

兼子さん:すごいんですよ。「この製品はこの人じゃないと」っていう位に育っているんです。上手な人には、新しい人が入ってきたときに教える講師になってもらってます。ちゃんと講師料を払って。

ーーそういったステップアップがあると、やりがいも感じるでしょうね。

兼子さん:人に教える、育てるというのはひとつのスキルでしょう。そうやって続けていって、こどもたちが育ったあとフルタイムの仕事につけるところまで応援していきたいと思っています。

ーーママたちが悩みを相談しあったり、いろんな形で関わる場所があったり。そのうち、石巻は「子育てがしやすいまち」として有名になるかもしれませんね。ほかの地域からうらやましがられるんじゃないでしょうか。

兼子さん:そうなったら嬉しいですね。これからやっぺすがどうなるかは正直まだわからないけど、必要とされていることを続けていきたいと思います。

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製作風景

s_IMG_5075のコピー石巻×VIRINAでは、この冬ちょうど新作を出したところ。普段は自宅で内職をしているママたちですが、この日はママカフェバタフライに来てもらい、製作風景を見せてもらいました。取材に応じてくれたのは渡辺さん(左)と高橋さん(右)です。

s_IMG_5083渡辺さんは震災後すぐにやっぺすの活動に参加し、ポーチやミサンガ等の内職仕事を担当してきました。

s_IMG_5088のコピーAMANECER』のつくり手インタビューにもご登場いただいた高橋さん。渡辺さんとは同級生なのだそう。

s_IMG_5102のコピー普段はふたりとも、家で作業をしています。こんなふうにいたずらをしてしまうので、作業ができるのはこどもがお昼寝しているときや夜寝ているときだけ。それでも、こうして仕事ができるのはありがたいそう。

s_IMG_5055のコピーこちらが新作の材料と工具です。

s_IMG_5057パーツを組み立て、

s_IMG_5110糸で補強します。

s_IMG_5114のコピーs_IMG_5120のコピー完成品のハートキーリング(左上)、ラビットファーグローブホルダー(右上)、ボンボンIDホルダー(下)です。それぞれ、ゴールドとシルバーの2色があります。

デザインを提供してくれたのは、毎日の生活の中で愛用したくなるアイテムをNYから世界中へ発信する『ATSUYO ET AKIKO(アツヨ エ アキコ)』。

デザイナーは日本人ママふたりで、青木さんがNYを訪れたときにいつも「東北の様子はどうですか?現地のママたちはどうしているの?」と聞いてくれたことから、「それならぜひ一緒にプロジェクトを!」とコラボが始まりました。

製品には「いつまでも東北を忘れない、世界中が日本を愛している!」という想いを込めた“JE T’AIME ♡ JAPON”の文字が煌めきます。

実際に手袋をまとめたグローブホルダー。とってもお洒落です。シルバーは鏡としても使用可能。

実際に手袋をまとめたグローブホルダー。とってもお洒落です。シルバーは鏡としても使用可能。

華やかでキュートな『石巻×ATSUYO ET AKIKO』シリーズ、あなたの手元にもおひとついかがですか?

s_IMG_5108のコピー

2014.12.22