つくり手インタビュー

浪江町の元・松永窯から運び出した大堀相馬焼のカケラは、除染された後に東京都文京区に送られ、『AJINA』の工房で『Piece by Piece』の製品へと再生されます。川上さんに、その工程を教えていただきました。

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職人の想いはものに宿る

——川上さんは、ずっとものづくりをされているんですか?

川上さん:最初は自動車の整備工をしていたんですよ。その後サラリーマンも経験したんですが、やっぱり手仕事が好きで戻ってきて、老舗アクセサリーショップで8年修行し、3年前に独立しました。

——震災後、東北と関わるようなことは何かされていましたか?

川上さん:ものづくりをしていたので、それを活かして何かできないかと考え、2011年の3月20日から、「PRAY FOR XX」というチャリティー製品の販売を開始しました。シルバーのメダルで、「XX」のところには「TOHOKU」でも「YOU」でも好きな文字を入れられるというものです。最初の100人までは売上の全額、50万を東北に寄付しました。それ以降は、継続するために500円ずつの寄付にしましたけど、トータルで500人位の人に買ってもらえたと思います。

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——松永さんからお電話があったときは、どう思いましたか。

川上さん:嬉しかったです。たくさんある工房の中から、うちを選んでくれたことが。復興のお手伝いができればと思ってお受けしました。

——大堀相馬焼のことはご存知でしたか?

川上さん:いえ、知りませんでした。でも、同じものづくりをする身として、自分がつくったものが捨てられちゃうのは悲しいし、使ったほうが大堀相馬焼の職人さんにとってもいいんじゃないかと思いました。

——普段自分のブランドとしてつくっている製品と、『Piece by Piece』の製品とでは、何か違うところはありますか?

川上さん:製作工程はそんなに違いませんが、やはり陶器を預かっているので緊張します。カケラをどう活かすかが一番悩むところですね。あまり厚みがあると使えないし、単一の色だと地味になってしまう。配色が綺麗なものを厳選してつくっています。

——ひとつつくるのに、どれ位時間がかかるんですか?

川上さん:丸1日かかりますね。ひとつひとつ、手作業で丁寧に仕上げているので。

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——安価な量産品がたくさんあるなかで、手づくりにこだわる理由を教えてください。

川上さん:ぼくは、つくり手の想いや姿勢って、ものに宿ると信じています。身につけるものだから、ちゃんと自分の手でつくりたい。使う道具もなるべく自分でつくるようにしています。そこまでやるところってまずないから、それが差別化になるんじゃないかなとも思っています。

——読者へのメッセージはありますか?

川上さん:そうですね、うーん……買って下さい(笑)たぶん、製品に込めた想いは伝わっているだろうと思っているので、あとは、たくさんの人に手にとってもらえると嬉しいです。

製作工程

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割れた陶器をほどよい大きさに砕き、
模様として使えそうな破片をピックアップして、大きさを整えます。

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グラインダーで角を丸く削ります。

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側面につける覆輪をつくります。規格が決まっていれば型をつくれるので楽ですが、
『Piece by Piece』ではカケラに合わせて毎回1からつくっています。

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石の形に合わせて銀の板をカットし、裏面をつくります。

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裏面には、大堀相馬焼の特徴のひとつである走り駒を刻印します。
松永さんからデータを送ってもらい、型をつくりました。
左を向いた馬には、「右に出る者はいない」という意味があります。

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バーナーで融点の低い金を溶かし、側面と底を接着します。
これで、取れることはまずありません。

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見栄えをよくするため、ヤスリで淵をギザギザにします。
最初の頃はつぶれてしまったり、大きさが揃わなかったりと苦労したそう。
シュッ、シュッ、と軽快な手つきで作業する川上さんですが、
素人にはとても真似できない芸当です。

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再度バーナーを使い、チェーンを通す輪っかをとりつけます。

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薬剤を溶かすため、硫酸の中に入れて15分ほど置きます。

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接着剤で石と背面を糊付けし、外れることがないよう、
ペンチを使って表面のシルバー部分を食い込ませます。

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粗さの違う3種類のヤスリを使ってヤスリがけした後、
磨き粉をつけてサンダーで磨きます。
こうすると、裏面や側面の銀がピカピカになります。

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超音波洗浄機を使い、微細な汚れもしっかり落とします。

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シルバーは硫黄に触れると黒ずむので、わざと裏面に塗り、
走り駒の模様を浮きだたせます。

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磨き粉をつけて布でしっかりと拭き、チェーンをつければ完成。
大堀相馬焼、最後の魂が宿る一点もののアクセサリーに生まれ変わりました。

2014.2.6