つくり手インタビュー
色とりどりのスペインタイル作品が壁いっぱいに飾られたみなとまちセラミカ工房。窯もあり、絵付けから焼成まで、全ての工程をここで行っています。

左から、遠藤美千代さん、木村美雪さん、阿部鳴美さん、
丹野富士子さん、遠藤晶子さん
話を聞いて製品をつくると、お互いに思い入れが強まる
——みなさんは、いつから活動に参加されているんですか?
丹野さん:私は、元々陶芸サークルのメンバーだったんです。震災で陶芸は中断していましたが、鳴美さんから「工房を構えたから、一緒にやりましょう」とお誘いを受けて再開しました。木村さんはサークルのメンバーではなかったけど、鳴美さんの知り合いだったんですよね。
阿部さん:技術を伝承するために、若い子にも仲間になってほしいと考えていたんです。それで、木村さんを誘いたいなと思っていたら、ちょうどお店に来て、スペインタイルを「可愛い!」と言ってくれて。あとになって、「実は狙っていたんだよ」と教えました(笑)
——スペインタイルは、すぐにつくれるようになりましたか?
丹野さん:いいえ。今でもまだまだです。窯を開けるまで、焼き上がりが心配で。埃1つ残っているだけでダメなんです。目で見てもわからない。「よし、大丈夫!」と思って焼いてみると、色が飛び散っていたり、厚みにムラがあったりして。そういうときは削って修正をして、また焼きます。その分、成功すると、「よかったぁ〜!」と嬉しくなりますよ。
遠藤さん:今でもみんな、東京までスペインタイルの修行に行っています。もう趣味でやっているわけではないから、「これでいい」ってことはないんですね。もっと綺麗につくれるように、これからも追究していきたいと思います。

こちらが寄贈された窯。1000度近くの高温で焼き上げます。
——活動をしていて嬉しいこと、楽しいことはありますか?
丹野さん:やっぱり、自分がつくったものをどこかで誰かが使ってくれてると思うと、やりがいを感じます。
遠藤さん:表札をオーダーしてもらうときは、いろいろ要望を聞いて、「じゃあこういうデザインでどうですか?」って提案するんですよ。たとえば、いまつくっているのは、以前女川でホタテの研究をしていた方の表札です。ホタテとサンマを使いながら、可愛く仕上げています。こういう風に話し合いながらつくると、お互いに思い入れができるでしょう。とってもいいと思います。自画自賛だけど(笑)
丹野さん:鈴木さんという方の玄関のウェルカムボードには鈴と月桂樹をあしらって。山形県からオーダー頂き接骨院さんにも飾ってもらってるし、結婚式のオーダーを受けることもあるし。エピソードはたくさんあるんですよ。
——そうしてスペインタイルを使う人が増えると、どんどんまちが色鮮やかになっていきますね。
遠藤さん:そうですね。こんな状況の中で、趣味が仕事になって。本当にありがたいなぁと思っています。幸せを実感する日々ですよ。
製作工程
タイルにカーボンシートを載せ、スタイラスで絵柄をなぞって写します。
次に、0.5㎜のシャープペンシルで濃くなぞります。
スポイトで釉薬を流します。細かな部分は筆を使うことも。
このとき、鉛筆の線が壁になるので、輪郭で色を分けることができるのです。
2日間乾かして、最後に顔料で目を入れます。
窯に入れ、また2日かけて焼き上げるとできあがり。とっても色鮮やか!
2013.11.22