つくり手インタビュー

2013年9月11日。震災からちょうど二年半が経った日、自然の家仮設住宅の一室を訪れました。そこには全国から届いた毛糸や完成した作品が所狭しと並び、お母さんたちが談笑する温かな光景が広がっていました。

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左から芳賀ひろ子さん、三浦ひろみさん、佐藤さち子さん、村松千代子さん、梅沢千代恵さん

結婚式で作品を使ってくれた

——みなさんは元々お知り合いだったんですか?

三浦さん:私と佐藤さんは元々同級生だったんですよ。仮設に入ってしばらくして、となりの棟にいたってわかったの。他のみなさんは、顔は知ってる程度でしたね。

梅沢さん:みんな仕事も違うし、会えば挨拶はするくらい。私たちは戸倉だけど、芳賀さんは志津川だからあんまり知り合いもいなかったよね。

芳賀さん:周りは知らない人ばかりで、おじいさんおばあさん抱えてやっていけるかなって思ってました。でも、仙台にいる娘が、「外に出てみんなと会話したほうがいいよ」「近くで支援活動をしている人たちに頼んで物資を送るから、話しかけてみたら」って、半ば強引に物資を送ってきたの。それが半端じゃない量だったから、思い切って皆さんに声をかけて、分けたんです。それがきっかけで少しずつ話すようになりました。それがなかったら、孤立してしまっていたかもしれないね。

——編み物は以前から好きだったんですか?

梅沢さん:私は初めて。最初の募集のとき、「教えます」って書いてあったから、「じゃあ編み物一年生でもいいのかな」って。これが「編みませんか」だったら参加できなかったね。

三浦さん:上達が早いから、半年位でもういろんなものが編めるようになったの。すごいよね。器用だったんだね、元々。

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梅沢さん:教える人がいいんでない?最初は帽子も真っ直ぐ編めなかったし、編み図もわかんなかったからね。記号が記号に見えなくて、飛ばして読んでたし。それが段々複雑なものを編めるようになってくると楽しくなってくるのね。でも、細かいから眼鏡つくったの。

村松さん:みんなつくったんですよ、眼鏡。私は子どもが小さい時は編んでたんだけど、海の仕事をするようになってからはできなかったね。震災後にこういう時間ができて、みんなでこうして編んで。できあがる工程がすごく楽しいのね。完成したら、友達とか家族にあげたりしています。

梅沢さん:嫁さんにあげたりね。「いいね」って褒めてもらえると、張り合いになるから。

——活動を続ける中で、大変だったことはありますか?

三浦さん:そうねえ、人数が減っていく度に寂しい想いはするよね。最初は15人集まったけど、仕事を見つけて来れなくなる人が出て来て、いまでは6人位だから。でも、仕事するのはいいことだからね。ただ、やっぱり寂しい気持ちはあるから、佐藤さんが仮設を出る時は、「え」って思いました。

佐藤さん:私はみんながいるからここにいたかったんだけど、娘達が仮設は狭くて嫌だっていうから、登米市に家を借りたんです。でも、週に1回、片道45分かけて通ってきてますよ。SKCが好きだから。

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——今までやっていてよかったと思ったことはありますか?

三浦さん:やっぱりね、自分の向上になるでしょ。競争心もいくらかは芽生えるし。初心者だった人が立派に編んだりしていると、どきっとしたり(笑)

佐藤さん:私なんて下手の横好きでたいしたことないんだけど、暇つぶしにはなってるね。ちょこっとした会話でもいいから、やっぱり人と喋らないとだめですね。

梅沢さん:一日中テレビ見てられないもんね。頭痛くなっちゃって。

村松さん:知り合いの娘さんからね、結婚式のときにいちごのアクリルたわしを使いたいって注文があったんですよ。籠に入れて、お客様に配ったんだって。そういう風に使ってもらえるのは嬉しいよね。

三浦さん:それが好評だったからね、村松さんの娘さんが結婚するときも、かあちゃんクラブからアクリルたわしをプレゼントしたの。そのときは座席の名札のところに置いてくれたそうですよ。娘さんも喜んでくれて、「また編んでね」って毛糸をたくさん買って来てくれてね。当分は在庫の心配をしなくてよさそうです。

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芳賀さん:うちはじいさんが一歩も部屋から出なくなっちゃったんですよ。慣れない土地でしょう、嫌だって言って、籠ってしまって。足腰が弱ってしまって仮設で暮らすのは難しいので、いまは施設に入っています。震災がなければ施設にお世話になることはなかったんだけどね。私も、最初の2〜3か月は下ばかり見てこわばった顔してたみたいで、「見られたものじゃなかった」って後になってから言われました。

でも、みんなと知り合って少しは顔を上げられるようになって、やっとね、表面だけでも笑えるようになりました。しばらく顔を出さないでいると、「生きてるかー」「大丈夫かー」って。言葉はきついように見えるかもしんないけど、そうじゃないの、愛情なんだよね。ここにいると色んなつながりもできるし、ありがたいなぁって思います。

三浦さん:ただお茶飲みだけしてもつまんないし、継続しないし…って思って編み物を始めたけど、それがみんなにこうして喜ばれてよかったです。ありがたいことに一生かかっても編みきれないくらいの毛糸が集まったから、これからも編み続けたいと思います。

製作工程

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仮設住宅の空室がSKCの活動場所。
毎日9時半から12時、みんなで集まってそれぞれの作品を編んでいます。

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黄緑の毛糸でヘタの部分を鎖編みで編んでいきます。

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赤い毛糸でぐるぐるとまるく編んでいきます。

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だんだん勝手に二つ折りになっていくので、
少しずつ編み目を減らしていき、最後に編み針を引き抜きます。

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完成。二重になっていて横に凹凸あるので持ちやすく、洗いやすいと評判です。

2013.9.11