つくり手インタビュー
瓦Re:KEYHOLDERのつくり手は、主婦と障がい者の方々です。今回は大船渡にある福祉作業所『@かたつむり』を訪問。所長の大西智史さんにお話を伺いながら、作業の様子を見学しました。
道具を使う練習になる
——この作業所は震災前から活動していたんですか?
大西さん:はい。大船渡にかたつむりという団体ができたのは平成13年。小学生くらいの障がい児を持つ親が集まって立ち上げました。子どもたちが高等部に進学する頃には法人格を持って事業所をつくろうと準備していたんですが、ちょうどその時に震災が起こってしまって。事務所も揃えていた道具も全て流されて、活動も一旦休止となりました。
——そうだったんですか…。大変でしたね。
大西さん:でも、陸前高田の岩手県福祉生活協同組合『すずらん』が「一緒にやりましょう」と手を差し伸べてくださったんです。そうして陸前高田の竹駒に事業所『すずらんとかたつむり』を開くことができて、活動を再開しました。それで、陸前高田で活動している瓦Re:KEYHOLDERと出会って、キーホルダーをつくらせていただくことになったんです。
——それはいつ頃のことですか?
大西さん:2011年の9月頃だったと思います。ただ、利用者の半分以上が大船渡の人なので通うのが少し大変で。ここを使っていいと声をかけてもらったので、元々大船渡の人たちは戻ってきたんです。Hand Madeさんは陸前高田グッズとして売り出していましたが、震災から2年が経ち被災地全体を対象にしてもいいんじゃないかということになり、継続してお手伝いさせていただいています。
——利用者は何名いらっしゃるんですか?
大西さん:13人ですね。職員が7人。ガレキを拾って、高圧洗浄するところまでHand Madeのスタッフさんにやってもらって、隙間に入った汚れを洗うところからはこちらで行います。切ってヤスリがけをして、リングを留めて袋詰めして。地域のイベント等への出店もしています。製作から販売まで、一環してお手伝いさせてもらっていますね。
——製作中に怪我をしてしまうことはないんですか?
大西さん:最初の頃はありました。ヤスリがけをしていて爪を削ってしまったり、ハサミで手を切ってしまったり。でも、どんどんうまくなってきています。親御さんも、どこまでやらせていいかわからないから、学校だったり職場だったりで刃物を使う練習ができるのはありがたいそうですよ。
——月にどれ位つくるんですか?
大西さん:最近は少し減りましたけど、昨年の冬なんかは200〜300個つくり、月20〜30万の収入になりました。
——すごいですね!つくり方は職員さんが教えたんですか?
大西さん:最初に中田さんが職員と利用者両方に教えてくれました。障がい者って、やれって言われたことは忠実にやるんですよ。「ここを削って」と言われたら、一所懸命やる。でも、その次の工程までは気が回らない。1から10まで説明する必要があるんですが、中田さんはそういったコツを掴んで丁寧に教えてくれました。
——みなさん、そうやって新しいことを覚えるのは好きなんですか?
大西さん:すべての作業をやってみたいけど、できないという子はいますね。「じゃあやらなくていいよ」ということではなく、できることを見つけるのが私たちの仕事です。うまくガレキを切れない子でも、三辺を他の人に切ってもらって、残りの一辺だけ切ってもらうとか。慣れてきたらニ辺にして、少しずつできることを増やしていく。製作の一部に携わっているんだという意識を持ってもらうことが重要です。
——「これは誰々の作品」という感じではなくて、みんなでひとつのものをつくっている感じなんですね。みなさん、瓦Re:KEYHOLDERに愛着は持っているのでしょうか。
大西さん:愛着は持っていると思いますよ。カラフルだし、ジャラジャラと音がするでしょう。障がい者が好きな素材ですよね。「作業を始めるよ」って材料を広げれば、自分の好きな順に道具を並べて、好きな色を集めて。必ず青いガレキから始めたり、一人ひとりこだわりがあるんですよね。形も、ハートにしてみたり、かたつむりにしてみたり、遊び心が出てきました。
——そういった形のものも販売しているんですか?
大西さん:ええ。数は多くないので、見つけたらラッキーですね(笑)
製作工程
陸前高田市建設課の許可をいただき、集積所からカラフルなガレキを拾い集めます。
高圧洗浄をかけて、表面の汚れを落とします。傷や隙間に入った汚れは、手洗いで。
さまざまな素材のガレキを程よい大きさに切り揃えます。
安全のため角を丸くして、表面をヤスリがけ。
一つひとつに穴を開け、色・形ごとに整理整頓。
おもちゃの素材のようにカラフルです。
好きな色のガレキを3枚選び、金具をつけます。色選びはつくる人のセンスにお任せ。
「RIKUTAKA」のハンコを押せば、瓦Re:KEYHOLDERのできあがり。
2013.6.19