つくり手インタビュー
この日は、同じく福島でオリジナルマスクを製作している『peach heart』の小笠原真代さんも事務所に来てくれました。『peach heart』製品の内職を會空が受けていたこともあり、2人は以前から親しい仲。つくり手同士、ものづくり談義に花が咲きます。
メンバーに背中を押されてここまでやってきた
——一体つくるのに、どれくらい時間がかかるんですか?
庄子さん:大体2時間くらいですね。時間給にすると全然割に合わないですよ。
小笠原さん:でも、2時間でつくれるんですね…。私だったらもっと時間がかかりそうです。
庄子さん:最初はもっと時間がかかりましたよ。繰り返しつくっていくと要点やコツがわかってくるから。スムーズにうまくできたときは嬉しいですね。それってものづくりの醍醐味ですよね。
——コツはどこにあるんですか?
庄子さん:うーん…口ではなんとも説明できませんね、そういうのって。手の感覚ですよね。
小笠原さん:そうですよね、ある意味職人というか、「このときはこうする」って、手が慣れてくるとわかるんですよね。
庄子さん:それを外すと何回やってダメだよね。気分によっても、まったくうまくいかない時もあります。
——會空のみなさんは、peach heartオリジナルマスクの内職仕事をしたこともあるそうですね。
庄子さん:そうそう、最初のころ。「こんな難しいのをつくれる人がいるんだ」って驚きましたよ。あのマスク、技術的にすっごく高度なんです。谷津さんチェックも厳しかったしね。
でも、それでメンバーがみんなスキルアップしたんですよ。なんとかいいものつくろうって一所懸命ついてきてくれたから。いまではしまくまもあいくーもね、縫い目がほんっと綺麗だよ。きっちりできるの。それはほんとうに、素晴らしいと思う。メンバーのみんなと出会わなかったら、私もここまでできなかったと思います。背中を押されつつ、お互いにがんばろうって進めてきました。
——途中で辞めたいという人は出てこなかったんですか?
庄子さん:そんなこと考えてるひまがなかったからね。次から次へと注文が来て。とにかく技術を上げることをこころがけてきました。やっぱり、ひとつの商品として確かな品質のものをつくらないとですからね。
小笠原さん:會空の製品は、ほんとうに品質が高いと思います。
——ちゃんと手足が動くんですよね。
庄子さん:そうそう。小さいくせにちゃんと動くんですよ、この子たち。
——技術的に難しそうですが、ワークショップでは参加者の方もちゃんとつくれるんですか?
庄子さん:ちゃんとサポートするので大丈夫ですよ。最初は皆さん「はじめてつくるけど、できるかな」と不安そうにしていたりするんですが、完成すると「自分にもできるんだ!」と満足して、笑顔になって帰っていきます。そういう表情を見ると、やっぱり嬉しいですね。
小笠原さん:ものづくりをする人同士って、通じ合いますよね。つくり手ならではの気持ちがあるというか。
庄子さん;そうそう、ここもそうだよね。話をしていて、「うんうん」って分かり合える。
一方で、谷津さんのように経営面が得意で、流通のこと、販売のことを考えてくれる人も必要です。客観的に見てくれる人がいないと成長できないから。
お互いができることがうまく噛み合うと、いいよね。
製作工程
学芸員の方がつくってくれた、あいくーの模型。
このおかげで完成イメージが湧いたといいます。
そこから起こしたのがこちらのパターン。この通りに布をカットして、
パーツを縫い合わせます。
中に綿を詰めて、ひと針ひと針丁寧に。
胴体には、アルテの女性社員がつくってくれたロゴも忘れずに。
体のパーツが全て揃ったら、縫い合わせます。
パーツを縫い合わせるときは、糸が見えないので大変です。
「何度やってもできないときがあります。何度でもやり直します」と庄子さん。
あいくーの目は最初、こちらの「動眼(どうがん)」を使っていました。
手芸店で販売しているものですが、
「オリジナルのものをつくろう」と今の形になりました。
これが現在のあいくー。ちょっととぼけた顔が愛らしく、見ていて和みます。
鼻の裏には厚紙が入っていて、少し固め。
同じく会津木綿のスカーフを巻いたらできあがり。
春限定の「さくら・縞」柄です。
完成!サイズは大・小の2つ。どっちがいいか迷ってしまいますね。
ちなみに写真左のあいくーは、まぬけな顔になってしまったので
庄子さんの家の子になる予定。
「それも味があって可愛いのでは」というと、「でも、一定の品質を保たないとね。
それは大事にしているところなんですよ」と庄子さん。
プロ意識の高さが伺えました。
2013.4.17