つくり手インタビュー

布草履をつくる作業所は、女川に4か所あります。地区ごとにつくり方が少しずつ違い、お互いから学び合っているそう。今回は、鷲神浜地区の「うみねこハウス」と小乗地区の作業所を訪れ、木村 和子さん(86)と菅野みさ子さん(73)からお話を伺いました。

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震災前よりも、逆に知り合いが増えた

——いつからつくっていらっしゃるんですか?

木村さん:去年の5月にここが立ち上がって、それからですね。震災後に何もやることがなくなったでしょ、だからこういうことを始めたの。

八木さん:女川では9割の家が被害に遭ったんですよ。避難所や仮設にはいろんな人たちが訪ねてくるけど、在宅の人は誰もトントンって扉を叩いてくれる人がいないの。集会所も流されて集まれるところがなかったから、こういう場所が必要だと思って「うみねこハウス」を建てたんです。それで、実家の近所の人とか、自分の母親の知り合いを伝って声をかけていきました。

木村さん:今までは週に3回くらい、集会所に行っていたんですよ。みんなでお茶したり、歌を歌ったり。だから、自分の家でぼおっとしているのは辛くて。

小乗で先に布草履をつくっているのを見て、私もつくりたいって思っていたんですよ。だから、声をかけられてすぐに乗りました。お小遣いもいくらか入るし、一石二鳥も三鳥もかなって(笑)

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——ものづくりは元々お好きだったんですか?

木村さん:編み物が好きで、以前からつくったものを人にあげたりしていたんですよ。だから、毛糸か布かの違いくらい。

——じゃあ、布草履もすぐに編めるようになったんですか。

管野さん:けっこう大変だったよね、最初は。みんなでつくりかた研究して、上手な人に教えてもらって。

木村さん:やっぱり買ってもらう以上は綺麗につくらないとーって、努力しながら、研究しながらつくっているんですよ。

——どのあたりが難しいところですか?

木村さん:カーブですね。徐々に編み目を増やしていって綺麗に丸くするんです。最初は3目、4目、5目と増えてあとはずっと6目。でも、Tシャツの厚みとか切り方によっても変わってくるんですよ
かかとの部分はつま先よりいくらか硬くしているんです。健康サンダルとおんなじで、そのほうが足の裏に刺激が出るでしょ。

——色や柄は自分たちで考えているそうですね。

管野さん:そう、生地を見て、「これとこれを組み合わせたらいいんじゃないか」って直感で。底の部分に何色か使うなら、なるべくそのうち一色を鼻緒と合わせるようにしています。

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——ご自身でも使われているんですか?

木村さん:はい。フローリングで布草履を履いて動き回ると、お掃除にもなるんですよ。真っ黒になりますよ!それだけ私がお掃除しない、無精だってことだけど(笑)洗って綺麗に整えて干すとまた履けるから、スリッパより良いですよね。
冬だってね、あったかいのよ。裸足で履いても、5本指靴下で履いても。普通の靴下だって、伸ばして履いちゃうの(笑)

——いつもここでつくっているんですか?

木村さん:ここでも編むし、うちでも。夜はけっこう時間があるから。ずっとテレビ見ていると目悪くなっちゃうでしょう、編み物していても目が痛くなるけど、これだと力も使うから、ちょうどいいんですよ。楽しくつくってます。

——辞めたいと思ったことは今までありますか?

管野さん:そういうことはないですよ。だって、ここに来ると友達と会えるから。ここでお茶飲みながら作業しているとたくさんの人が訪ねてくるから、震災前より逆に知り合いが増えたくらい。

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(たい焼きを焼く管野さん)

——ここからもらったお給料は何に使っているんですか?

木村さん:去年の暮れに松島で同窓会があったんですよ。一泊だからちょっとお金かかるでしょう。だからそれに使いました。

あと、お正月にお買い物もしました。私の家は大規模半壊で、水に浸かって家具も家電も壊れたの。お見舞金をいただいてリフォームできたけど、何もない状態で。でも、お友達が家電をくれたんですよ。冷蔵庫もレンジも電気釜もトースターも、みんな。ありがたいですよね。
ただファンヒーターはなかったから、布草履をつくったお金で買いました。またこれから貯めないとね。

——今後の希望はありますか?

木村さん:買ってくれるお客さんが増えると嬉しいですね。何か気がついたことがあったら教えてほしいです。きちっとつくっているつもりだけど、もしも「すぐ壊れちゃった」なんて人がいたら言ってもらえたら。やっぱり、良いものをつくりたいんですよ。

製作工程

¥IMG_2990 Tシャツを細長く切って紐状にして、かぎ針を使って編んでいきます。

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23cmなら7段、26cmなら10段と、
サイズに合わせて小判型に整え、底の部分をつくります。

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こちらは鼻緒の部分。3種類の布を結っていきます。
ほどけることがないよう、力を入れて。

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両足分つくり、端の部分を仮止め。

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別の布で、親指と人差し指の間の部分(前緒)を縫い付けます。

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底の部分の編み目にかぎ針を通し、鼻緒をしっかり取り付けます。
これがけっこう力のいる作業。

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裏側の部分は、綺麗に結って整えます。
地区によっては、この部分に布をかぶせて隠すところも。
地区ごとに工夫している箇所です。

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完成!これから誰の足元に届くのでしょうか。

2013.1.25