女川出身の学習塾経営者・八木純子さんは、震災後、子守りや高齢者のデイケアサポートなど、さまざまな活動をしてきました。人々が避難所から仮設住宅へ移り始めた2011年7月、「これから必要なものは“居場所”と、“わくわくして打ち込めて、ちょっとしたお小遣いになるもの”だ」と考えた八木さんは、地元の高齢女性たちの手仕事づくりを始めます。試行錯誤の上辿り着いたのは、全国から送られてきたTシャツを使った布草履。材料費がかからないので、1,500円の売上のうち1,000円をつくり手のおばあちゃんたちに渡せます。デザインは全てつくり手にお任せ。カラフルなもの、落ち着いた色合いのもの、ひとつとして同じものはありません。
「せっかくなら女川独自のものをつくろう」と、通常の布草履と違いかぎ針で編む方法を開発しました。編み目のざっくりとした凹凸が健康サンダルのように足の裏を刺激します。履いているだけでフローリングの床も掃除できてしまうすぐれものです。
津波で、家も、家族も、仕事も流されてしまいました。小さい小さい仮設住宅のなかで、これからの生活に不安を覚える毎日。でも、生きる喜びを見つけることができました。
それが、布草履。
このおかげで、みんなと繋がっている。自分が必要とされている。そんな気持ちになれました。今では、薬を飲まなくて済むようになりました。
一日中ひとりで家にいることもなくなりました。
ちょっと不細工かもしれませんが、私たちの希望が、編み込まれています。
大切に履いてください。これがあなたとの絆です。
───── 高白浜布草履組合一同