Reborn-Art Festival 2017鑑賞レポート2017.10.31UP

8月中旬、仙台の「Arabesque」「ベビースマイル石巻」を取材した後、「Reborn-Art Festival 2017(以下、リボーンアートフェス)」を鑑賞しました。

リボーンアートフェスとは、石巻中心市街地と牡鹿半島を舞台とした「アート」×「音楽」×「食」のお祭りです。2017年は7月22日から9月10日まで開かれました。

取材後だったので、自由に使える時間は夕方と翌日の1日。牡鹿半島の先まで行くとなると、車でも1時間以上かかります。「どれ位回れるだろう」と思っていましたが、半分以上の作品を見ることができました。

もう会期は終わっていますが、2017年の記録としてレポートします。

【辿ったルート】
1日目:Aエリア(石巻中心市街地エリア)
2日目:Dエリア(牡鹿半島先端・鮎川エリア)→Cエリア(牡鹿半島中部エリア)→Bエリア(石巻市街地周辺エリア)→Aエリア(石巻中心市街地エリア)

1日目はレンタカーを借りず石巻中心市街地エリアを探索。旧観慶丸商店、日活パール劇場に立ち寄りました。

旧観慶丸商店のお土産コーナー。「三陸石けん工房KURIYA」の商品が置かれていました。

 

こちらはFUNADE

 

 

日活パール劇場。旧ポルノ映画館で作品を鑑賞するという、中々にスリリングな体験。

 

「カオス*ラウンジ」。この作品が一番好きです。

 

ほかにも色々見たかったのですが、道に迷っているうちにタイムアップ(※ほとんどの作品が17時〜19時で終了します)。ただ、カールステン・ニコライ「石巻のためのstring(糸)」など一部夜間に見られるプログラムもあり、晩ごはんを食べに行く途中で鑑賞しました。

少しわかりづらいですが、地上から空に向かって光の糸が伸びています。

 

駐車場の壁面に次々と写真が映し出され、道行く人も足を止めて眺めていました。

 

今回私は半日だけでしたが、石巻駅前には石巻こけし作りを体験できる「ツリーツリーいしのまき」、石巻のお土産が揃う「石巻ASATTE」、石巻2.0が運営するカフェ「IRORI」、大漁旗をリメイクした小物が並ぶ「FUNADE Studio」、そして石ノ森正太郎の世界を体験できる「石ノ森萬画館」などがあるので、1日いても楽しめると思います。

2日目はレンタカーを借りて、一番遠い会場であるホテルニューさか井までドライブ。そこから少しずつ石巻方面に戻っていきました。牡鹿半島に入るとほぼ1本道なので展示会場もすぐ見つかります。

金華山に向かって歌を奉納できる「ヨタの青空カラオケ」(Yotta)

 

「時の海-東北」(宮島達夫)

 

「あっちとこっち」(増田セバスチャン)

 

牡鹿半島内に廃棄されていたさまざまなもので構成した「ダンバリウム」(岩井優)

 

霧がかかってしまったのが残念!「真夜中に咲く花」(草間彌生)

 

ボートを漕ぐことで水面が開かれる「ファスナーの船」(鈴木康広)

 

洞窟内に投影される「燈話」(さわひらき)

 

リボーンアートフェスのシンボルとなった「White deer」(名和晃平)

 

「食」も大事なテーマのひとつ。期間中だけ出現した「リボーンアーとダイニング」で昼食を取りました。

 

地元の団体やアーティストの作品が展示された「荻浜小学校」も良かったです。こちらは「牡鹿の望遠鏡」(乃村工藝社)

 

障害のある方々と作品をつくるペンギンズアート工房

 

石巻のお土産の新定番、石巻こけしも登場!

 

写真家・鈴木省一さんが毎朝撮りためた「石巻のあさ」

 

津波で犠牲になった人の数だけつくる木像。「います」(パルコキノシタ)

 

体育館には、同じくパルコキノシタの津波を少女に見立てた作品が展示されていました。

 

防潮堤工事とスケートを組み合わせた「EVERYDAY HOLIDAY SQUAD – RODE WORK-」(SIDE CORE)。石巻のスケートパーク「ワンパーク」にて。

 

小林武史 × WOW × DAISY BALLOON のコラボ作品。鏡面の球体が音楽と共に浮遊し、不思議な感覚になります。

 

Bエリア(石巻市街地周辺)に入ると途端に会場が見つけづらくなり、また迷っているうちにタイムアップに。帰りにAエリアの中瀬で開かれたライブを鑑賞し、レンタカーを返しました。

全体的に、ほかの地域型芸術祭と比べて、いい意味でも悪い意味でも実験的な場所で展示するなぁと驚きました。雨が降っていたのもありますが、ぬかるみの中を15分ほど歩いた先に会場があったり、洞窟内に作品を展示していてヘルメットをかぶって鑑賞したり、行く先々でヒルに注意するよう言われたり。個人的には、こうしたあまり整備されていない場所に入っていくのって面白いなと思います。

また、東日本大震災のことを表した作品も多かったことも印象的でした。石巻・牡鹿半島を会場にするとなると避けては通れないテーマですし、ほかの芸術祭との大きな違いです。作品をつくる側も、それを受け入れる地元側も、大きな葛藤があったのでは。作品によって救われた人もいれば、「私たちのことをわかっていない」と感じた人もいただろうと推察します。

震災が地域にどんな変化をもたらしたのか、地元の人は震災について語られた作品を、もっといえば震災とその後の歩みをどう捉えているのか。それはその地域で暮らす人にしかわからないし、全員が同じ答えを持つはずはなく、一人ひとり違うでしょう。

それでも、外から来た人、震災後初めて東北沿岸部を訪れた人にとっては、この作品群は想像する手がかりに、考えるきっかけになったのではないでしょうか。公式サイトには、こんな言葉が綴られていました。

Artとは「人が生きる術」すべてを指すArsということば(ラテン語)がもとになっています。私たちは震災以後はっきりと、自分たちのまわりからほんとうの「人の生きる術」が失われかかっていることを、認識するようになりました。いまもっとも必要なことは、この「人の生きる術」を蘇らせ取り戻すことにあると考えた私たちは、自分たちのめざすものをReborn-Artと名付け、食や住や経済などの「生活の技」、アートや音楽やデザインの「美の技」、地域の伝統と生活の「叡智の技」などとして、さまざまな領域におけるReborn-Artを発見—再発見しようとしています。お祭りの中心地となる牡鹿半島には、人の手の加えられていない自然が多く残されています。そこには津波の傷跡とともに、人の営みと豊かな海と山と森があり、そのまんなかにReborn-Artのお祭りが出現します。ここを訪れる皆さんが、地域の人々やアーティストやスタッフと一緒になってお祭りをつくりだすとき、ほんとうの意味で地域が前に向かって進んでいくためのエネルギーが生まれてくるはずです。

出典:リボーンアートフェス公式ウェブサイト

石巻・牡鹿半島の人たちと話をすると、会話の端々から「たくましさ」「強さ」を感じることがよくあります。信念に反することは絶対にしない、一本芯の通った姿勢。自分たちのことは自分たちで何とかしていこうという気概。目の前の人に見せる、意外なほどの優しさ。そういったものも、Reborn-Artといえるかもしれません。

次回開催は2019年。来年2018年にも、プレイベントや地域内での常設展示を行う予定とのこと。ぜひ、作品鑑賞がてら、地元のお店を覗いてください。

なお、東京・外苑前にあるワタリウム美術館では2017年12月10日まで「リボーンアート・フェスティバル東京展」を開催中。「興味はあったけど行けなかった!」という方はぜひ。

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